市長が市の管理する都市公園内の国公有地上に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して上記施設の敷地の使用料の全額を免除した行為は,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,上記施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても,一般人の目から見て,市が上記法人の上記施設における活動に係る特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものであって,憲法20条3項に違反する。 (1) 上記施設は,上記都市公園の他の部分から仕切られた区域内に一体として設置され,上記施設の本殿と位置付けられている建物は,その内部の正面には孔子の像及び神位(神霊を据える所)が配置され,家族繁栄,学業成就,試験合格等を祈願する多くの人々による参拝を受けているほか,上記建物の香炉灰が封入された「学業成就(祈願)カード」が上記施設で販売されていたこともあった。 (2) 上記施設で行われる儀式は,孔子の霊の存在を前提として,これを崇め奉るという宗教的意義を有するものであり,上記施設の建物等は,上記儀式を実施するという目的に従って配置されたものである。 (3) 市が策定した上記都市公園周辺の土地利用計画案においては,同計画案の策定業務に係る委員会等で孔子等を祀る廟の宗教性を問題視する意見があったこと等を踏まえて,前記(1)の建物を建設する予定の敷地につき上記法人の所有する土地との換地をするなどして,同建物を私有地内に配置することが考えられる旨の整理がされていた。 (4) 上記法人に対する上記施設の設置許可に係る占用面積は1335㎡であり,免除の対象となる敷地の使用料に相当する額は年間で576万7200円であり,また,上記設置許可の期間は3年であるが,公園の管理上支障がない限り更新が予定されている。 (5) 上記法人は,上記施設の公開や前記(2)の儀式の挙行を定款上の目的又は事業として掲げている。 (反対意見がある。)
市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して同施設の敷地の使用料の全額を免除した行為が憲法20条3項に違反するとされた事例
憲法20条3項
判旨
地方公共団体が宗教的施設の敷地使用料を全額免除する行為が、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超える場合には、憲法20条3項が禁止する宗教的活動に該当する。本件では、孔子廟の宗教的性格や免除の経緯、利益の大きさを総合考慮し、特定の宗教への援助にあたるとして違憲と判断された。
問題の所在(論点)
地方公共団体による宗教的施設への敷地使用料免除措置が、憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」に該当し、憲法違反となるか。
規範
事件番号: 昭和54(行ツ)17 / 裁判年月日: 昭和54年9月20日 / 結論: 棄却
地方税法三四三条二項、七〇二条二項の規定は、憲法一一条、一三条、一四条、二九条に違反しない。
地方公共団体と宗教との関わり合いが、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超える場合には、憲法20条3項等の政教分離規定に違反する。違反か否かは、当該施設の性格、免除の経緯、無償提供の態様、一般人の評価等の諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきである。
重要事実
那覇市は、一般社団法人である参加人が所有・管理する孔子廟(久米至聖廟)を市有公園内に設置することを許可し、年間約576万円に上る公園使用料の全額を免除した。当該施設は孔子等の神位を祀り、宗教的意義を有する儀式(釋奠祭禮)が行われ、一般の参拝者も受け入れていた。市側は観光資源としての価値や歴史的意義を理由に免除を行ったが、当該施設は文化財指定を受けておらず、参加人は別途私有地も所有していた。
あてはめ
第1に、本件施設は神体や神位を備え、宗教的儀式を定款上の事業として継続的に実施しており、その宗教性は軽微とはいえない。第2に、免除の経緯において、歴史的価値等は認められるものの、あえて国公有地を無償提供する合理的必要性は乏しい。第3に、免除額は多額で継続的であり、参加人が宗教的活動を行うことを直接的に容易にする効果を持つ。以上を総合すると、一般人の目から見て市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない。
結論
本件免除措置は、地方公共団体と宗教との関わり合いが相当な限度を超えるものであり、憲法20条3項に違反し、無効である。
実務上の射程
空知太神社訴訟(最大判平22.1.20)の総合判断枠組みを維持・踏襲したものである。公園使用料の免除という継続的な利益供与が「援助」と評価されやすいこと、観光資源や歴史的意義といった世俗的目的があっても、宗教的性格が強い場合には正当化が困難であることを示しており、答案作成上は各要素の相関関係を論理的に説明する際の指針となる。
事件番号: 昭和43(行ツ)10 / 裁判年月日: 昭和49年9月2日 / 結論: 破棄差戻
地方税法七三条の四第一項六号及び三四八条二項一二号所定の「学術の研究を目的とする」法人とは、その定款又は寄附行為の目的条項に日本学術会議法一〇条に定める区分によつて示されるような意味における人文科学及び自然科学の学理的研究並びにその応用に関する研究を行う趣旨を掲げ、かつ、その組織運営及び活動の実体からみて右研究という目…
事件番号: 昭和28(オ)616 / 裁判年月日: 昭和30年3月23日 / 結論: 棄却
一 土地台帳若しくは土地補充課税台帳に一月一日に所有者として登録されている者は、納期において所有権を有しなくてもその年の四月一日に始まる年度の固定資産税の納税義務を負う。 二 地方税法第三四三条および第三五九条は憲法第一一条、第一二条、第一四条、第二九条、第三〇条、第六五条に違反しない。
事件番号: 令和5(行ツ)261 / 裁判年月日: 令和7年3月17日 / 結論: その他
市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀る施設を設置することを一般社団法人に許可し、これに基づき市が上記公園内の土地を上記施設の敷地としての利用に供していることは、次の⑴~⑹など判示の事情の下では、憲法上の政教分離原則及び憲法20条、89条に違反しない。 ⑴ 上記施設は、中国から琉球に渡来し琉球王国の繁栄を支えた人々が…