市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反する場合において,市が,上記神社施設の撤去及び上記市有地の明渡しの請求の方法を採らずに,氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に適正な賃料で賃貸することは,上記氏子集団が当該賃貸部分において上記神社施設の一部を維持し,年に数回程度の祭事等を今後も継続して行うことになるとしても,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記の違憲性を解消するための手段として合理的かつ現実的であって,憲法89条,20条1項後段に違反しない。 (1)ア 上記賃貸がされると,上記氏子集団が利用する市有地の部分が大幅に縮小され,当該賃貸部分の範囲を外見的にも明確にする措置により利用の範囲が事実上拡大することも防止される上,上記神社施設の一部の移設や撤去等の措置により上記市有地の他の部分からは上記神社施設に関連する物件や表示は除去されることとなる。 イ 上記氏子集団が上記アの移設や撤去等の後に国道に面している当該賃貸部分において祭事等を行う場合に,上記市有地の他の部分を使用する必要はない。 ウ 上記神社施設の前身は上記市有地が公有となる前からその上に存在しており,上記市有地が公有となったのも,小学校敷地の拡張に協力した用地提供者に報いるという目的によるものであった。 (2) 上記神社施設が全て直ちに撤去されると,上記氏子集団がこれを利用してごく平穏な態様で行ってきた祭事等の継続が著しく困難になるのに対し,上記賃貸がされると,上記氏子集団は当該賃貸部分において従前と同様の祭事等を行うことが可能となる。 (3) 上記賃貸の実施は市議会の議決を要するものではなく,上記賃貸の方針は上記氏子集団や連合町内会の意見聴取を経てその了解を得た上で策定されたものであり,賃料の額も年3万円余であって,その支払が将来滞る蓋然性があるとは考え難い。
市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為の違憲性を解消するための手段として,氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて市が上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に適正な賃料で賃貸することが,憲法89条,20条1項後段に違反しないとされた事例
憲法20条1項,憲法89条
判旨
地方公共団体が土地を神社敷地として無償提供し、当該行為が憲法89条および20条1項後段に反する状態にある場合、適正な賃料による有償貸付けへの切り替えや敷地面積の縮小等の措置(本件手段)を講じることで、一般人の目から見て特定の宗教に対し特別の便益を提供し援助していると評価されるおそれはなくなり、政教分離原則に違反しない状態として合理的に解消される。
問題の所在(論点)
市が、違憲状態にある土地の無償提供を解消するにあたり、建物の撤去・明渡しを求めず、有償賃貸借への切り替えや宗教的色彩の除去等の措置を講じることは、憲法20条1項後段、89条に違反しないか。
事件番号: 平成19(行ツ)334 / 裁判年月日: 平成22年1月20日 / 結論: 棄却
市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を同町内会に譲与したことは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,憲法20条3項,89条に違反しない。 (1) 上記神社施設は明らかに神道の神社施設であり,そこでは神道の方式にのっとった宗教的行事が行われており,上記のような市有地の提供行為をそのまま…
規範
地方公共団体の行為が、憲法の定める政教分離原則(20条1項後段、89条)に違反するか否かは、当該行為の目的が宗教的意義を有し、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるか否かという観点から、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきである。既に違憲状態にある行為の解消手段については、当該手段の実施により、一般人の目から見て特定の宗教に対し特別の便益を提供し援助していると評価されるおそれがなくなるか、また、その手段が信教の自由に及ぼす不利益の程度等を比較衡量し、合理的かつ現実的な手段であるかを検討する。
重要事実
(1)市は、小学校敷地拡張の経緯から寄附を受けた市有地を、町内会が所有する神社物件(鳥居、地神宮、祠等)の敷地として長年無償提供していた。(2)最高裁大法廷(空知太神社事件)により当該提供行為は違憲と判断されたが、解消方法として撤去・明渡し以外の合理的手段の有無が差し戻された。(3)市は、適正賃料による賃貸借への切り替え、敷地面積の縮小(52平米)、地神宮の「開拓記念碑」への変更、神社表示の撤去等の「本件手段」を策定し、相手方と合意した。
あてはめ
(1)目的・効果:本件手段が実施されれば、適正賃料が支払われ、敷地は大幅に縮小され、宗教的徴表も除去される。土地取得の経緯も、学校用地提供者への配慮という世俗的・公共的なものであった。これらを総合考慮すれば、一般人の目から見て市が特定の宗教に特別の便益を提供していると評価されるおそれはない。(2)必要性・妥当性:直ちに全面撤去を求めることは、氏子集団の平穏な宗教的活動を著しく困難にし、信教の自由に重大な不利益を及ぼす。対して本件手段は、相手方も費用負担等を了承しており、信教の自由への影響は限定的である。(3)現実性:市と住民側の協議が調っており、賃料不払いの蓋然性も低いため、確実に実施可能といえる。
結論
本件手段は違憲状態を解消する手段として合理的かつ現実的であり、これに基づき土地利用を継続させることは、憲法89条、20条1項後段に違反しない。
実務上の射程
本判決は、空知太神社事件(大法廷)後の差戻上告審として、具体的・現実的な違憲状態の解消プロセスを示したものである。政教分離原則違反が認められた場合でも、即座に施設の撤去が強制されるのではなく、信教の自由との調整を図った「有償化・分離・縮小」等のグラデーションのある解決策を許容している。
事件番号: 平成19(行ツ)260 / 裁判年月日: 平成22年1月20日 / 結論: 破棄差戻
1 市が連合町内会に対し市有地を無償で建物(地域の集会場等であるが,その内部に祠が設置され,外壁に神社の表示が設けられている。),鳥居及び地神宮の敷地としての利用に供している行為は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記行為がもともとは小学校敷地の拡張に協力した地元住民に報いるという世俗的,公共的な目的から始ま…
事件番号: 平成12(行ヒ)246 / 裁判年月日: 平成16年4月23日 / 結論: 棄却
1 道路が権原なく占有された場合には,道路管理者は,占有者に対し,占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得する。 2 道路占用許可を受けることなく都道にはみ出して設置されたたばこ等の自動販売機が約3万6000台もあったこと,その1台ごとに債務者を特定して債権額を算定するには多くの労力と多額の費用を要する…