1 道路が権原なく占有された場合には,道路管理者は,占有者に対し,占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得する。 2 道路占用許可を受けることなく都道にはみ出して設置されたたばこ等の自動販売機が約3万6000台もあったこと,その1台ごとに債務者を特定して債権額を算定するには多くの労力と多額の費用を要するが,1台当たりの占用料相当額は少額にとどまること,東京都は,対価を徴収することよりも,上記自動販売機の撤去という抜本的解決を優先させる必要があると判断したこと,上記自動販売機を設置した販売商品の製造業者が,東京都の指導に応じ,費用の負担をして上記自動販売機を撤去したことなど判示の事実関係の下においては,東京都がその業者に対して上記自動販売機の設置による都道占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使しないことは,違法ではない。
1 権原に基づかない道路の占有と道路管理者の占有者に対する占用料相当額の債権の取得 2 東京都が自動販売機を都道にはみ出して設置した者に対して占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使しないことが違法ではないとされた事例
道路法(平成12年法律第106号による改正前のもの)32条1項,道路法(平成11年法律第87号による改正前のもの)39条1項,道路法施行令(平成11年政令第352号による改正前のもの)19条の4第1項,民法703条,民法709条,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号,地方自治法施行令171条の5第3号,東京都道路占用料等徴収条例(昭和27年東京都条例第100号)2条
判旨
道路の不法占有に対し、自治体は原則として占用料相当額の請求権を行使すべきであるが、債権額が少額で取立費用を下回り、かつ撤去という抜本的解決を優先した判断に合理性がある場合は、当該債権を行使しないことも適法である。
問題の所在(論点)
自治体が有する損害賠償請求権または不当利得返還請求権を行使しないことが、地方自治法および施行令に照らして違法となるか。
規範
地方公共団体の長は、客観的に存在する債権を原則として行使すべきであり、その不行使に裁量は認められない。しかし、地方自治法施行令171条の5第3号に基づき、債権金額が少額で取立てに要する費用に満たないと認められ、かつ履行させることが著しく困難または不適当であると認めるときは、債権の保全および取立てをしないことができる。
重要事実
東京都道において、商品製造業者である被上告人らが自動販売機を権原なくはみ出して設置していた。都は撤去を優先し、業者側の積極的な協力と費用負担により、約3万6000台のほぼ全てを撤去させることに成功した。住民である上告人らは、都が撤去までの期間の占用料相当額(1台月額約1683円)を請求しないのは違法であるとして、住民訴訟を提起した。
あてはめ
本件債権額は1台あたり月額約1683円と「少額」であり、3万6000台もの対象から個別に債務者を特定し算定する労力と費用を考慮すれば「取立てに要する費用に満たない」と認められる。また、最大の課題は通行妨害の解消(撤去)であり、対価徴収より撤去を優先した判断には合理性がある。業者が撤去費用を負担し目的が達成された状況下では、さらなる取立ては「著しく不適当」といえる。
結論
本件の事実関係の下では、東京都が損害賠償請求権等を行使しなかったとしても違法とはいえない。
実務上の射程
地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において、自治体の債権不行使が争点となる場合の抗弁として機能する。特に、義務履行(撤去等)と金銭債権(占用料等)の二面性がある事案において、行政目的の達成を優先した判断を正当化する枠組みとして有用である。
事件番号: 平成6(行ツ)19 / 裁判年月日: 平成7年3月23日 / 結論: その他
一 公共施設の管理者である国若しくは地方公共団体又はその機関が都市計画法三二条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分に当たらない。 二 主位的請求を認容した原判決を破棄して右請求に係る訴えを却下すべきものとした場合において、予備的請求に係る訴えが不適法でその欠缺を補正することができないときは、上告審は、右…
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小作地が農地法第六条の所有制限を受けるにかかわらず、農業委員会がこれにつき同法第八条所定の手続を開始しなかつたとしても、それだけでは、右小作地の小作人から、右農業委員会に対し、右第八条による公示および通知をなすべき義務あることの確認を求める訴を提起することはできない。
事件番号: 昭和44(行ツ)10 / 裁判年月日: 昭和45年10月16日 / 結論: 破棄自判
朝鮮民主主義人民共和国創建二〇周年祝賀行事に参加することを目的とする再入国許可申請に対してされた不許可処分の取消を求める訴は、参加を予定した右行事のすべてが終了した後約一か月を経過した時点においては、すでに判決を求める法律上の利益を喪失したものというべきである。