民法709条の不法行為を構成する行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たる。
民法709条の不法行為を構成する行為は宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たるか
民法709条、宗教法人法81条1項1号
判旨
宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為には、民法709条の不法行為を構成する行為が含まれる。また、同号の適用にあたって、当該行為が代表役員その他の幹部によるものであることは必ずしも要しない。
問題の所在(論点)
1. 民法709条の不法行為を構成する行為が、法81条1項1号の解散命令事由である「法令に違反」する行為に含まれるか。 2. 同号の行為主体は、宗教法人の代表役員等の幹部に限定されるか。
規範
宗教法人法81条1項1号の趣旨は、法令違反により著しく公共の福祉を害し、宗教団体に法人格を与えたままにしておくことが不適切となった場合に、司法手続により強制的に解散させる点にある。民法709条の不法行為を構成する行為は、不法行為法上違法と評価され、同条という法令に基づき責任を課される行為であるから、同号の「法令に違反」する行為に当たると解するのが相当である。また、同号柱書および同号の文言上、当該行為が代表役員等の幹部によるものであるとの限定はない。
重要事実
文部科学大臣は、宗教法人である世界平和統一家庭連合(本件法人)の信者らによる献金勧誘等が民法709条の不法行為を構成し、損害賠償責任を認める22件の民事判決が存在すること等から、宗教法人法(以下「法」)81条1項1号の解散事由の疑いがあるとして、法78条の2第1項に基づき計7回の報告を求めた。しかし、本件法人が報告事項の一部について報告しなかったため、東京地裁は代表役員に対し法88条10号に基づく過料10万円の決定を下した。これに対し抗告人は、民法709条は禁止規定ではなく同条違反という概念は成立しないこと、および幹部による行為に限定されるべきことを理由に、報告徴収の前提となる「疑い」を否定して争った。
事件番号: 昭和37(ク)64 / 裁判年月日: 昭和41年12月27日 / 結論: 棄却
一 非訟事件手続法による過料の裁判は、憲法第三一条、第三二条、第八二条に違反しない。 二 前項の裁判に対する不服申立についての裁判は、公開・対審の手続によらなくても、憲法第三二条、第八二条に違反しない。
あてはめ
1. 民法709条は特定の行為を直接禁止する規定ではないが、同条の不法行為は一定の法規範に違反し違法と評価される行為であり、同条に基づき損害賠償責任が課される。かかる行為が著しく公共の福祉を害し、法人格を維持させることが不適切となる事態は十分にあり得るため、これを「法令に違反」する行為と解することは同号の趣旨に沿う。また、解散命令は信者の宗教上の行為を制限するものではなく、要件も厳格(著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる場合)であるため、このように解しても規定が不明確・過度に緩やかとはいえない。 2. 法81条1項柱書および同号の文言には、行為主体を幹部に限定する明文の規定はなく、解釈上もそのような限定を付すべき根拠は認められない。
結論
民法709条の不法行為を構成する行為は法81条1項1号の「法令に違反」する行為に当たり、行為主体も幹部に限定されない。したがって、本件法人の信者らによる不法行為を理由とした報告徴収は適法であり、報告を拒絶した代表役員を過料に処した判断は正当である。
実務上の射程
宗教法人の解散命令事由(およびその前提となる報告徴収権)の範囲を画定した重要な判例である。行政罰としての過料の手続において、解散事由の存否(疑い)の解釈が争点となっており、不法行為(私法上の義務違反)が公法上の解散事由の基礎となり得ることを明示した点に実務上の意義がある。
事件番号: 平成16(許)20 / 裁判年月日: 平成16年12月16日 / 結論: 破棄自判
1 非訟事件手続法19条1項所定の非訟事件の裁判を取り消す裁判に対しては,即時抗告をすることはできず,通常抗告をすることができる。 2 過料の確定裁判の存在を看過して同一事由について非訟事件手続法208条ノ2に規定する過料の裁判をした場合には,同裁判を行った裁判所は,職権により確定後の同裁判を取り消すことができる。
事件番号: 平成19(行フ)6 / 裁判年月日: 平成20年3月6日 / 結論: 棄却
商品の原産国について不当な表示を行った者が,公正取引委員会から,一般消費者の誤認を排除するための措置として,上記表示が事実と異なるものであり,一般消費者に誤認される表示である旨を速やかに公示すること等を命じる旨の審決を受けたにもかかわらず,その履行をけ怠していた場合において,上記の者が同審決を受ける約2年半前に上記表示…
事件番号: 昭和46(ク)349 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: 棄却
非訟事件手続法による緊急命令違反を理由とする過料の裁判は、憲法三一条、三二条に違反しない。
事件番号: 平成8(ク)8 / 裁判年月日: 平成8年1月30日 / 結論: 棄却
大量殺人を目的として計画的、組織的にサリンを生成した宗教法人について、宗教法人法八一条一項一号及び二号前段に規定する事由があるとしてされた解散命令は、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、右宗教法人の行為に対処するには、その法人格を失わせることが必要か…