再審請求を棄却した原々決定を是認した原決定に対する特別抗告が棄却された事例
刑訴法435条6号
判旨
再審請求における新証拠が「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(刑訴法435条6号)に当たるかは、新旧全証拠を総合評価して判断すべきであるが、本件の臨床医学的鑑定や供述分析鑑定は、確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるほどの証明力を持たない。
問題の所在(論点)
死因や死亡時期に関する臨床医学的鑑定、およびコンピュータ等を用いた供述分析鑑定が、確定判決の認定を覆すに足りる「明らかな証拠」に当たるか。
規範
刑訴法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」とは、確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいう。その判断にあたっては、新証拠と他の全証拠を総合的に評価し、確定判決の事実認定の正当性に合理的な疑いが生じるかを検討すべきである。
重要事実
被告人Aらは、被害者Dを窒息死させて死体を遺棄したとして有罪判決を受けた。再審請求において弁護人は、(1)Dは事故により搬送時に既に死亡していたとする臨床医のJ鑑定、(2)テキストマイニングによる供述分析のK鑑定、(3)供述心理学によるL・M鑑定を新証拠として提出し、事件性を否定した。
あてはめ
J鑑定は死体解剖写真等の限定的情報に基づく推論であり、死因の可能性を指摘するにとどまり、強固な自白や目撃証言を覆すほどではない。K鑑定およびL・M鑑定は、供述の信用性を直接判断するものではなく、裁判所の判断において考慮すべき可能性を指摘する性質にとどまる。これらの新証拠を旧証拠と総合評価しても、共犯者の各自白や客観的状況から導かれる確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるには至らない。
事件番号: 平成30(し)146 / 裁判年月日: 令和元年6月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】再審請求において提出された法医学鑑定(新証拠)が、死体の腐敗等の制約により決定的な証明力を有しない場合には、確定判決を支えた他の証拠の証明力と対比・総合評価すべきであり、直ちに「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」には当たらない。 第1 事案の概要:請求人は、夫らと共謀して親族を絞殺し死体を遺棄したと…
結論
本件各新証拠は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」には当たらず、再審開始は認められない。
実務上の射程
最新の科学的手法を用いた鑑定であっても、その基礎となるデータの限定性や手法の性質(可能性の指摘にとどまる等)によっては、既存の証拠構造を破壊する射程は限定される。
事件番号: 平成30(し)76 / 裁判年月日: 令和3年4月21日 / 結論: 棄却
新証拠によるMCT118型鑑定の証明力減殺は,同鑑定の手法が改善されたことによるものであるのに対し,HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力は,鑑定資料のDNA量や状態の不良,更にはこれらの鑑定自体の特性等に基づいて評価されるべきものであって,MCT118型鑑定の証明力減殺が,H…
事件番号: 平成30(し)147 / 裁判年月日: 令和元年6月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】再審請求における「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」の判断にあたっては、新証拠の証明力に限界がある場合、確定判決を支える他の客観的証拠や供述証拠の信用性と対比し、総合的に評価すべきである。 第1 事案の概要:申立人らは、確定判決(絞殺および死体遺棄)に対し、法医学者の新鑑定(O鑑定)等を新証拠として…
事件番号: 平成27(し)587 / 裁判年月日: 平成29年12月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】再審請求における「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(刑訴法435条6号)の判断に際し、確定判決の主要な供述を翻す新供述が提出された場合は、その変遷の経緯、内容の合理性、及び確定判決を支えた他の客観的証拠との整合性を慎重に吟味すべきであり、これらを欠く新供述は「明白な証拠」に当たらない。 第1 事案…
事件番号: 平成17(し)44 / 裁判年月日: 平成22年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】新旧両証拠を総合的に評価したとしても、確定判決における認定に合理的な疑いを生じさせるような明白な新証拠が認められない場合には、再審請求を棄却すべきである。 第1 事案の概要:本件は殺人被告事件であり、確定判決は被告人を犯人と認定し懲役15年の刑に処した。弁護人は、犯行に用いられたとされる凶器(ナイ…