刑訴法435条6号の証拠の明白性を否定した原判断が是認された事例
刑訴法435条6号,刑訴法447条
判旨
新旧両証拠を総合的に評価したとしても、確定判決における認定に合理的な疑いを生じさせるような明白な新証拠が認められない場合には、再審請求を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法435条6号の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」の判断基準、および本件の新証拠(鑑定結果等)が確定判決の認定を揺るがす明白性を有するか。
規範
再審請求において「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(刑事訴訟法435条6号)にあたるか否かは、確定判決の証拠と再審請求で提出された新証拠とを総合的に評価し、確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じさせるかどうかを基準に判断する。この際、新証拠が単独で、あるいは他の証拠と相まって、確定判決を覆すに足りる蓋然性(明白性)を有している必要がある。
重要事実
本件は殺人被告事件であり、確定判決は被告人を犯人と認定し懲役15年の刑に処した。弁護人は、犯行に用いられたとされる凶器(ナイフ等)の形状や、遺体の創傷の特徴、および現場の状況(血痕の飛散態勢等)に関する鑑定結果が、確定判決の認定(特定の凶器による犯行)と矛盾すると主張して再審を請求した。具体的には、確定判決が認めた手法(普通分解)では凶器の痕跡を残さず犯行を行うことは不可能であるとする実験結果や、被告人以外の者が関与した可能性を示唆する供述、鑑定書を新証拠として提出した。
あてはめ
最高裁は、再審請求者が提出した新証拠(鑑定書等)の内容を検討した。まず、凶器の取り扱いに関する実験結果については、確定判決が認めた犯行態様を技術的に不可能であると断定するに足りる明白な証拠とはいえないと評価した。また、遺体の傷の特徴や血痕の状態に関する新証拠も、確定判決が依拠した他の証拠(被告人の自白や周囲の状況証拠)を覆し、被告人が犯人ではないとの合理的疑いを抱かせるには至らないと判示した。すなわち、新旧証拠を総合評価しても、確定判決の結論を維持することが正当であると解される。
事件番号: 平成7(し)49 / 裁判年月日: 平成10年10月27日 / 結論: 棄却
一 確定判決が科刑上一罪として処断した一部の罪について無罪とすべき明らかな証拠を新たに発見した場合は、その罪が最も重い罪ではないときであっても、刑訴法四三五条六号の再審事由に該当する。 二 確定判決が詳しく認定判示した犯行の態様の一部に事実誤認のあることが判明した場合であっても、そのことにより罪となるべき事実の存在に合…
結論
再審請求には理由がないとして、棄却した原決定を維持し、本件抗告を棄却した。
実務上の射程
判決文の文字化けが激しいため、特定の証拠名称(スナック等の店名や具体的な鑑定名)の詳細は「判決文からは不明」な部分が多いが、結論として再審の「明白性」の要件を厳格に判断する実務運用を確認している。
事件番号: 平成30(し)147 / 裁判年月日: 令和元年6月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】再審請求における「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」の判断にあたっては、新証拠の証明力に限界がある場合、確定判決を支える他の客観的証拠や供述証拠の信用性と対比し、総合的に評価すべきである。 第1 事案の概要:申立人らは、確定判決(絞殺および死体遺棄)に対し、法医学者の新鑑定(O鑑定)等を新証拠として…
事件番号: 平成14(し)18 / 裁判年月日: 平成17年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求における「証拠の明白性」(刑訴法435条6号)の判断にあたっては、新証拠だけでなく、確定判決の証拠と全証拠を総合評価すべきである。本件の筆跡鑑定等の新証拠は、作成時の心理的状況や習癖の恒常性を考慮しておらず、確定判決の認定を左右するに足りる明白な証拠とは認められない。 第1 事案の概要:狭…
事件番号: 平成27(し)587 / 裁判年月日: 平成29年12月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】再審請求における「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(刑訴法435条6号)の判断に際し、確定判決の主要な供述を翻す新供述が提出された場合は、その変遷の経緯、内容の合理性、及び確定判決を支えた他の客観的証拠との整合性を慎重に吟味すべきであり、これらを欠く新供述は「明白な証拠」に当たらない。 第1 事案…
事件番号: 平成11(し)155 / 裁判年月日: 平成14年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審の請求において、新証拠が「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」にあたるかは、確定判決の証拠と新証拠を総合評価して判断される。本件では、元警察署長のノートは伝聞証拠であり正確性や証拠価値が乏しく、確定判決の基礎となった証拠の信用性を揺るがすには足りない。 第1 事案の概要:申立人が10分間の犯行機会…