弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項)を棄却した決定の謄本が先に弁護人に送達され、その後に被告人本人に送達された場合において、弁護人が同決定に対して即時抗告をするときは、その提起期間は、同決定の謄本が被告人本人に送達された日から進行する。
弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項)の棄却決定の謄本が先に弁護人に送達され、その後に被告人本人に送達された場合における、同決定に対する弁護人の即時抗告提起期間の起算日
刑訴法316条の20第1項、刑訴法316条の26、刑訴法351条1項、刑訴法352条、刑訴法355条、刑訴法358条、刑訴法422条
判旨
弁護人が被告人のために証拠開示命令請求の棄却決定に対し即時抗告をする場合、その提起期間は、決定の謄本が被告人本人に送達された日から進行する。弁護人に先に送達された場合であっても、被告人本人への送達日を基準に抗告期間の徒過を判断すべきである。
問題の所在(論点)
弁護人が被告人のために行う即時抗告において、決定の謄本が弁護人と被告人の双方に送達された場合、刑訴法422条の提起期間の起算点はどちらの送達日となるか。
規範
刑訴法422条の即時抗告の提起期間(3日)に関し、弁護人が被告人のため独立して即時抗告をする場合(同法358条)、その期間は、決定の謄本が被告人本人に送達された時から進行すると解すべきである。弁護人への送達が先行したとしても、被告人本人の不服申立権を保障する趣旨から、期間の起算点は被告人本人への送達時を基準とする。
重要事実
弁護人が刑訴法316条の26第1項に基づき証拠開示命令を請求したが、原々決定により棄却された。当該決定の謄本は、主任弁護人には令和6年8月30日に、被告人本人には同年9月3日にそれぞれ送達された。弁護人は同年9月5日に即時抗告を申し立てたが、原決定は主任弁護人への送達日(8月30日)を起算点として期間徒過により不適法とした。
事件番号: 平成23(し)286 / 裁判年月日: 平成23年8月31日 / 結論: 棄却
弁護人に対し証拠開示することを命じる旨求めた弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項)を棄却する決定については,即時抗告の提起期間は,同決定の謄本が弁護人に送達された日から進行する。
あてはめ
本件では、弁護人は被告人のために即時抗告を行っているところ、提起期間は被告人本人に送達された9月3日から進行する。弁護人はその3日以内である9月5日に申し立てている。原決定は、主任弁護人への送達(8月30日)を基準に3日を計算し、9月5日の申立てを不適法としたが、これは刑訴法358条及び422条の解釈を誤るものである。
結論
本件即時抗告の申立ては適法な期間内になされたものであり、不適法として棄却した原決定には決定に影響を及ぼす法令違反があるため、これを取り消し差し戻すべきである。
実務上の射程
証拠開示命令棄却に対する不服申立てだけでなく、弁護人が被告人のために行う他の即時抗告全般において、起算点の有利原則(被告人基準)を確認した実務上重要な判断である。答案上は、弁護人の代理権・独立上訴権の行使と、被告人の防御権保障の観点から期間を算定すべき文脈で活用する。
事件番号: 昭和43(し)95 / 裁判年月日: 昭和43年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の告知(送達)が被告人本人と弁護人の双方に対してなされた場合、抗告申立期間は、被告人本人に対して送達された時から進行を開始する。 第1 事案の概要:弁護人Aが、即時抗告申立棄却決定に対して特別抗告を申し立てた事案。当該決定謄本は、被告人本人には昭和43年10月27日に、弁護人Aには同年10月2…
事件番号: 平成19(し)424 / 裁判年月日: 平成19年12月25日 / 結論: 棄却
1 刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含む。 2 取調警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,取調べの…
事件番号: 昭和55(し)33 / 裁判年月日: 昭和55年5月19日 / 結論: 棄却
刑事補償請求事件についてされた即時抗告棄却決定の謄本が、請求人本人と即時抗告申立代理人との双方に日を異にして送達された場合における特別抗告申立の期間は、請求人本人に送達された日から進行する。
事件番号: 平成7(し)166 / 裁判年月日: 平成7年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法422条が定める即時抗告の提起期間の妥当性は、専ら立法政策の問題であり、憲法適否の問題ではない。 第1 事案の概要:抗告人は、刑事訴訟法422条が規定する即時抗告の提起期間(本決定当時は3日)の定めについて、憲法に違反する旨を主張して特別抗告を提起した。事案の具体的な背景(どのような裁判…