1 株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、当該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない。 2 株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)423条1項本文により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができる。
1 株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡の譲渡当事者間における効力 2 株券発行会社の株式の譲受人が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)423条1項本文により譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することの可否
(1、2につき)会社法128条 (2につき)民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)423条1項本文
判旨
株券発行会社の株式につき、株券発行前になされた譲渡は当事者間では有効であり、譲受人は債権者代位権に基づき会社に対し自己への株券交付を請求できる。会社がこれに応じて会社法216条所定の形式を具備した文書を譲受人に直接交付したときは、当該文書は有効な株券としての効力を有する。
問題の所在(論点)
1. 株券発行前になされた株式譲渡は、譲渡当事者間において有効か(会社法128条1項の射程)。 2. 株式の譲受人が債権者代位権に基づき受領した、会社法216条の形式を具備する文書は、有効な「株券」といえるか。
規範
1. 株券発行前の株式譲渡につき、会社法128条1項は適用されず、同条2項により会社に対する関係で効力が否定されるにとどまるため、譲渡当事者間では意思表示のみで有効に効力を生じる。 2. 譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全するため、民法423条1項に基づき譲渡人の会社に対する株券発行請求権を代位行使でき、会社に対し直接自己への株券交付を求めることができる。 3. 会社がこれに応じ216条所定の形式を具備した文書を譲受人に交付した場合、その文書は有効な株券としての効力を有する。
重要事実
非公開の株券発行会社である本件会社において、株主である被上告人らは、株券発行前にAらに対し株式を譲渡した(本件譲渡)。その後、Aらは会社に対し債権者代位権に基づき自己への株券交付を請求し、会社はこれに応じてAらに株券(本件株券)を交付した。上告人は、Aらから本件株券の交付を受けて株式を譲り受けたが、被上告人らが「株券発行前の譲渡は無効であり、また株主に直接交付されていない本件株券は無効である」として株主権を争った。
あてはめ
1. 会社法128条1項は「株券発行後」の譲渡に関する規定であり、株券発行前の譲渡については同条2項が会社に対する効力を制限するにとどまる。したがって、被上告人からAらへの本件譲渡は、当事者間では有効である。 2. Aらは有効な譲受人として譲渡人に対し株券交付請求権を有するため、これを被担保債権として株券発行請求権を代位行使できる。会社がこれに基づき譲受人たるAらに本件株券を直接交付したことは、会社が譲渡人に対する交付義務を履行したものと評価できる。したがって、本件株券は株主に交付されていないことを理由に無効とはならず、有効な株券として成立しているといえる。
結論
株券発行前の譲渡は当事者間で有効であり、譲受人が代位行使により会社から直接交付を受けた文書は有効な株券にあたる。したがって、上告人は本件株式の株券の交付を受けたといえる。
実務上の射程
株券発行会社における株券未発行時の譲渡の効力(会社法128条の解釈)および代位行使による株券発行の有効性を基礎付ける重要判例である。答案上では、会社法128条1項と2項の書き分け、および「株券の成立時期(株主への交付時)」の例外として、代位行使による受領も含むことを論じる際に使用する。
事件番号: 昭和42(オ)231 / 裁判年月日: 昭和42年11月17日 / 結論: 棄却
他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がされた場合においては、名義貸与者ではなく、実質上の引受人が株主となるものと解すべきである。