株式会社が商法第二一〇条の規定に違反して自己株式の質受をした場合には、右質受は無効である。
自己株式の質受の効力
商法210条
判旨
株式会社が旧商法210条(現会社法155条等)の禁止規定に違反して自己の株式を質権の目的として受けることは無効であり、同条が例外として許容する場合に限り有効となる。
問題の所在(論点)
株式会社が自己株式を担保(質権)として受けた場合において、旧商法210条(現行法における自己株式取得制限)の趣旨に照らし、その担保設定行為の効力が認められるか。
規範
株式会社が自己株式を質権の目的として受けることは、原則として禁止(旧商法210条、現会社法155条・160条等参照)されており、これに違反してなされた質権設定は無効である。ただし、法律が例外として許容する場合に限り、例外的に有効となる。
重要事実
訴外Dは、上告人の代理人として、上告人所有の新株5,500株を、被上告会社(発行会社)に対する損害賠償債務の担保として同社に提供した。被上告会社はこの自己株式について担保提供(質権設定)を受けたが、原審はこれが旧商法210条の自己株式取得禁止規定に抵触するか否かを十分に審理することなく、当然に有効であるとの前提で上告人の請求を排斥した。
あてはめ
被上告会社は自己株式を上告人から債権担保のために受領している。これは株式会社による自己株式の質受けに該当するところ、特段の事情がない限り旧商法210条により禁じられる行為である。原審は、当該担保提供が同条の禁止規定に反して無効となるか、あるいは例外として許容される場合に該当し有効となるかを判断すべきであった。
結論
自己株式を質権の目的として受ける行為は原則として無効であり、例外規定に該当しない限り効力は認められない。原審がその有効性を審理しなかったことは審理不尽、理由不備にあたり、破棄を免れない。
実務上の射程
自己株式の取得(質受けを含む)に関する制限は、資本維持の原則や株主間の公平を確保するための強行法規的性質を有する。会社法下においても、自己株式の取得・質受けは厳格な手続(155条、160条等)を要し、これらに違反する取引は私法上も無効と解されるため、答案上は無効説を採る際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和60(オ)522 / 裁判年月日: 昭和63年10月21日 / 結論: その他
株式譲渡承認の申請手続と右承認を条件とする株券の指図による占有移転を命ずる判決の執行不能を条件とする代償請求は、将来の給付の訴えとしての訴訟要件を欠く。