問屋が委託の実行としてした売買により権利を取得した後これを委託者に移転しない間に破産した場合には、委託者は、右権利につき取戻権を行使することができる。
問屋の破産と取戻権
商法552条,破産法87条
判旨
問屋が委託の実行として物品を買い入れ、その権利を委託者に移転する前に破産した場合、委託者は当該物品等について取戻権を行使できる。
問題の所在(論点)
問屋が委託に基づき買い入れた物品について、委託者への権利移転が完了する前に問屋が破産した場合、委託者は破産法上の取戻権を行使できるか。
規範
問屋が委託の実行として売買をした場合、法律上の権利を取得するのは問屋であるが、その実質的利益は委託者に帰属する。問屋は他人のために売買を行うことを業とするものであるから、問屋の一般債権者は当該権利を一般的担保として期待すべきではない。したがって、問屋が取得した権利を委託者に移転する前に破産したときは、委託者は当該権利につき取戻権を行使できる。
重要事実
上告人(委託者)は、証券会社(問屋)に対し、株式の買入委託を行い代金31万円を預託した。証券会社は右委託に基づき、別会社から本件株式を買い入れこれを保管していたが、委託者へ株式を移転する前に破産宣告を受けた。上告人は、破産管財人である被上告人に対し、本件株式について取戻権(またはその代償請求)を主張した。
あてはめ
本件では、D証券(問屋)が上告人の計算において本件株式を買い入れており、その実質的利益は上告人に帰属している。D証券は自己の名をもって上告人のために買入れをなしたものであり、その保管中の株式はD証券の一般債権者のための担保とされるべきではない。したがって、権利移転未了の段階であっても、上告人はD証券の破産に際し、実質的権利者として本件株式の取戻しを主張し得る。
結論
委託者は、問屋が委託により買い入れ保管中の株式について取戻権を行使できる。したがって、これを否定した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
破産法における取戻権の成否が問題となる場面で、実質的権利関係を重視して「一般的担保としての期待」を否定する論理として活用できる。特に委任・問屋類似の法的性質を有する取引において、委託者の保護を図る際の強力な根拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)104 / 裁判年月日: 昭和32年5月30日 / 結論: 棄却
商法第五五一条の「物品」中には、有価証券を包含する。