株式の取戻権者が株券引渡の訴を提起した後に右株式につき生じた配当金および右株式につき株主に割り当てられた新株を破産管財人において取得した場合には、右取戻権者は、破産管財人に対し不当利得に基づく財団債権として右配当金および新株の返還を請求することができる。
親株の取戻権者の破産管財人に対する配当金および子株の返還請求の許否
破産法47条5号,民法704条,商法206条1項,商法280条ノ21項5号,商法280条ノ4,商法293条
判旨
問屋の破産後、委託者が取戻権を有する株式から生じた配当金や新株を破産管財人が受領した場合、委託者は不当利得に基づく財団債権としてその返還を請求できる。
問題の所在(論点)
問屋が破産した場合において、委託者が取戻権を有する特定の権利(株式)から派生した利益(配当金・新株)を破産管財人が受領した際、委託者はこれを財団債権として請求できるか。不当利得の成否およびその法的性質が問題となる。
規範
問屋が委託の趣旨に従い第三者から権利を取得し、委託者に移転する前に破産した場合、委託者は当該権利につき取戻権を行使できる。この取戻権の対象である権利から生じた果実(配当金)や変形物(新株)を破産財団が取得したときは、実質的利益の帰属者である委託者の損失において財団が利得したものといえる。したがって、委託者は破産法上の財団債権(不当利得)としてその給付を請求しうる。
重要事実
上告人(委託者)は、D証券(問屋)に対し株式の購入を委託した。D証券は自己の名において第三者から本件株式を譲り受け保管していたが、委託者へ名義を書き換える前に破産宣告を受けた。破産宣告後、当該株式の名義が破産者であったため、被上告人(破産管財人)が当該株式に係る配当金および株主割当による新株を取得した。これに対し、上告人が配当金および新株の給付を求めた事案である。
あてはめ
本件では、D証券が上告人の委託に基づき取得した株式を保管中に破産しており、上告人は当該株式について取戻権を有する。それにもかかわらず、破産管財人が当該株式から生じた配当金や新株を取得したことは、実質的帰属者である上告人の損失によって利得したといえる。この利得は法律上の原因を欠く不当利得に該当し、旧破産法47条5号(現行破産法148条1項4号参照)の規定に従い、財団債権として返還を求めることができると解するのが相当である。
結論
委託者は、取戻権の対象である株式から生じた配当金および新株について、不当利得に基づく財団債権として請求できる。これを否定した原審は審理不尽・理由不備の違法がある。
実務上の射程
問屋(商法551条)の破産における取戻権の範囲を、目的物そのものだけでなく、そこから派生した利益(代償的利益や果実)にも拡張し、財団債権性を認めた重要な判断である。答案上は、破産法上の取戻権の論証において、目的物の変形物や果実が財団に混入した場合の救済策(不当利得・財団債権)として活用する。
事件番号: 昭和57(オ)496 / 裁判年月日: 昭和59年4月20日 / 結論: 棄却
株券を窃取された受寄者は、株券の所持人がその取得につき悪意又は重過失がある場合には、所持人に対し、民法一九三条の規定に基づき、その返還を請求することができる。