株券を窃取された受寄者は、株券の所持人がその取得につき悪意又は重過失がある場合には、所持人に対し、民法一九三条の規定に基づき、その返還を請求することができる。
窃取された株券の取得につき悪意又は重過失がある所持人に対する受寄者の株券返還請求権
民法193条,商法229条,小切手法21条
判旨
株券を窃取された受寄者は、その取得につき悪意又は重大な過失がある所持人に対し、民法193条の趣旨に基づき盗品の被害者として株券の返還を請求できる。
問題の所在(論点)
株券の受寄者が窃盗被害に遭った場合において、取得につき悪意・重過失のある所持人に対し、民法193条に基づき株券の返還を請求できるか。
規範
商法229条(当時)及び小切手法21条は株券の権利取得を制限する規定にすぎず、返還請求権者の規定はない。そのため民法1条に基づき民法の規定を適用すべきであり、民法193条は盗品被害者が善意取得の要件を具備しない占有者に対して返還請求権を有することを当然の前提としている。したがって、株券を窃取された受寄者は、取得に悪意・重過失のある所持人に対し、同条の趣旨に基づき返還を請求しうる。
重要事実
運送の委託を受けて株券を所持していた被上告人が、駅構内において何者かにこれを窃取された。その後、上告人は無権利者の疑いがある人物から、3000万円の融資依頼を承諾した上で本件株券を譲り受け、占有を取得した。上告人は、譲渡人が無権利者であることを知っていたか、あるいは疑念を解消する措置を講じなかった点に重大な過失があった。
あてはめ
被上告人は株券の受寄者として占有していたところ、これを窃取されており「盗品の被害者」にあたる。一方、上告人は株券の取得にあたり、譲渡人が無権利者であることについて悪意または重大な過失があったと認められる。この場合、上告人は商法229条等により善意取得(権利取得)を否定される。したがって、被害者である被上告人は、民法193条の趣旨に基づき、上告人に対し株券の返還を求めることができる。
結論
被上告人の株券返還請求は認められる。
実務上の射程
有価証券の善意取得において、商法や小切手法に返還請求権の直接の規定がない場合の補充的適用を示す。占有回収の訴え(民法200条)における「侵奪の事実を知っていた(悪意)」の意義(単なる可能性の認識では足りない)についても触れており、占有権に基づく請求と本権(民法193条)に基づく請求の使い分けに留意すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)496 / 裁判年月日: 昭和43年12月12日 / 結論: 破棄差戻
株式の取戻権者が株券引渡の訴を提起した後に右株式につき生じた配当金および右株式につき株主に割り当てられた新株を破産管財人において取得した場合には、右取戻権者は、破産管財人に対し不当利得に基づく財団債権として右配当金および新株の返還を請求することができる。