株式譲渡承認の申請手続と右承認を条件とする株券の指図による占有移転を命ずる判決の執行不能を条件とする代償請求は、将来の給付の訴えとしての訴訟要件を欠く。
執行不能を条件とする代償請求が将来の給付の訴えとしての訴訟要件を欠くとされた事例
民訴法226条,民事執行法31条2項
判旨
意思表示を命ずる給付判決は、判決の確定または執行文の付与によって強制執行が完了し、執行不能が生じる余地がないため、執行不能を条件とする代償請求の訴えは「あらかじめ請求する必要」を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
意思表示を命ずる判決の執行不能を条件とする代償請求について、将来の給付の訴えとしての適法性(あらかじめ請求する必要性)が認められるか。
規範
執行不能を条件とする代償請求は、将来の給付の訴え(民事訴訟法135条)に該当し、「あらかじめその請求をする必要がある場合」に限り提起できる。意思表示を命ずる債務(民事執行法174条1項)については、判決確定または執行文付与によって当然に意思表示があったものとみなされ、執行が完了する。したがって、執行自体が不能となることはあり得ず、条件成就の可能性がないため、あらかじめ請求する必要性は認められない。
重要事実
被上告人(原告)らが、上告人(被告)に対し、(1)株式譲渡承認申請手続、および(2)指図による占有移転(返還請求権の譲渡と通知)の意思表示を求めて提訴した。あわせて、被上告人らは(3)上記各手続の強制的実現が不能となった場合の備えとして、一株当たり600円の割合による金員の支払を求める代償請求(執行不能を条件とする将来の給付の訴え)を併合して提起した。原審は、これらの請求をいずれも認容した。
あてはめ
本件における株式譲渡承認申請手続および指図による占有移転の請求は、いずれも特定の意思表示をすべきことを求めるものである。これらの強制執行は、民事執行法174条1項(旧民執法173条1項)により、判決の確定(または条件成就を証明する文書を提出して執行文を得た時点)をもって法的に完了し、完了と同時に意思表示の効果が生じる。この仕組み上、執行自体が物理的に不能となることは理論上想定できず、代償請求の条件である「執行不能」という事態は生じ得ない。また、株式譲渡承認が得られないことは、執行不能ではなく本来の請求の不成立(条件不成就)に過ぎない。したがって、将来の給付をあらかじめ求める必要性は存在しない。
結論
意思表示を命ずる判決についての代償請求は、執行不能が生じる余地がないため、あらかじめ請求する必要性を欠き、訴訟要件を満たさない不適法な訴えとして却下される。
実務上の射程
代償請求は本来の給付が執行不能(物の滅失等)になる可能性がある場合に認められる。しかし、擬制される「意思表示」は確定等で自動的に執行が終了するため、物理的な不能はあり得ない。司法試験上、将来の給付の訴えの「必要性」を問う問題において、対象となる給付の性質(意思表示か否か)から訴訟要件の有無を判断する材料として極めて重要である。
事件番号: 昭和40(オ)25 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 破棄差戻
問屋が委託の実行としてした売買により権利を取得した後これを委託者に移転しない間に破産した場合には、委託者は、右権利につき取戻権を行使することができる。