一、遺言による寄附行為に基づく財団法人の設立を目的として、判示のように、代表機関を持ち、寄附財産を独立に管理運用し活動する財団は、設立中の財団法人として法人格のない財団にあたり、訴訟上の当事者能力を有する。 二、遺言執行者が、遺言による寄附行為に基づく寄附財産として管理する相続財産の株式を、判示のように設立中の財団法人に帰属させ、その代表機関名義に名義を書き換える行為は、遺言の執行に必要な行為にあたり、これにより、相続人は株式についての権利を喪失する。
一、法人格のない財団として設立中の財団法人に訴訟上の当事者能力が認められた事例 二、遺言による寄附行為の寄附財産について遺言執行者のした処分が有効とされた事例
民法 34条・41条2項・42条2項・1012条1項・1013条,民訴法46条
判旨
遺言による寄附行為と生前処分の寄附行為が競合する場合、遺言の撤回(民法1023条2項)が認められるには、生前処分による財団設立の効力発生が必要である。また、遺言執行者が「設立中の財団」に財産を帰属させ、その名義を代表者へ書き換える行為は、遺言執行に必要な範囲内として有効である。
問題の所在(論点)
1. 生前になされた財団法人の設立手続が、遺言による寄附行為と抵触し遺言を撤回したものとみなされるか(民法1023条2項)。 2. 遺言執行者が「設立中の財団」の代表者に株式名義を書き換える行為は、遺言執行の権限内(民法1012条1項)として有効か。
規範
1. 遺言による寄附行為と生前の寄附行為が抵触し、遺言が取り消されたものとみなされる(民法1023条2項)ためには、単に生前処分の手続がなされただけでは足りず、少なくとも当該生前処分に基づく財団設立が主務官庁の許可(旧民法34条)によって効力を生じていることを要する。 2. 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法1012条1項)。遺言による財団設立が目的である場合、法人格取得前であっても、実質的に個人から分離された「設立中の財団」への財産帰属及びその代表者名義への書換えは、遺言執行として相当かつ適切な行為に該当する。
事件番号: 昭和41(オ)194 / 裁判年月日: 昭和46年12月2日 / 結論: 棄却
遺言による寄附行為に基づく財団の設立行為がされたあとで、遺言者の生前処分の寄附行為に基づく財団設立行為がされて、両者が競合する形式になつた場合において、右生前処分が遺言と抵触し、その遺言が取り消されたものとみなされるためには、少なくとも、まず、右生前処分の寄附行為に基づく財団設立行為が主務官庁の許可によつてその効果の生…
重要事実
遺言者Dは、株式を出捐して財団法人Eを設立する旨の遺言を作成した。その後、Dは生前に別の財団法人Fの設立を目的とする寄附行為書を作成し許可申請したが、主務官庁から書類を返戻されたまま死亡した。Dの死後、遺言執行者Bは、遺言に基づき財団法人Eの設立準備を進め、出捐対象の株式を「設立準備委員長B」の名義に書き換え、議決権を行使した。これに対し、Dの相続人らが、生前処分による遺言の撤回及び株式の相続を主張して争った。
あてはめ
1. 本件において、生前処分たる財団法人Fの設立は、主務官庁の許可を得ておらず、いまだその効力を生じていない。したがって、遺言による財団法人E設立の寄附行為と抵触する事態は生じておらず、遺言の撤回とは認められない。 2. 出捐株式は、相続人側の一般財産とは明確に分離され、設立中の財団の代表者たるBにより管理運用されていた。設立中の財団は権利能力なき財団として存立が認められ、Bによる名義書換えは遺言の目的達成に必要な行為といえる。したがって、民法1013条に基づき相続人の処分権は制限され、株式の権利は完全に「設立中の財団」に帰属したと評価される。
結論
遺言は撤回されておらず有効である。また、遺言執行者による「設立中の財団」への名義書換えは有効であり、相続人は当該株式についての権利を喪失する。
実務上の射程
遺言による寄附行為の効力発生(遺言時か法人成立時か)については争いがあるが、本判決は「設立中の財団」を権利能力なき財団として認め、遺言執行のプロセスとしてそこへの財産移転を肯定した点に実務上の意義がある。遺言執行者の権限(1012条)の広範さを論じる際や、法人設立過程の財産帰属を論ずる際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和60(オ)522 / 裁判年月日: 昭和63年10月21日 / 結論: その他
株式譲渡承認の申請手続と右承認を条件とする株券の指図による占有移転を命ずる判決の執行不能を条件とする代償請求は、将来の給付の訴えとしての訴訟要件を欠く。