遺言による寄附行為に基づく財団の設立行為がされたあとで、遺言者の生前処分の寄附行為に基づく財団設立行為がされて、両者が競合する形式になつた場合において、右生前処分が遺言と抵触し、その遺言が取り消されたものとみなされるためには、少なくとも、まず、右生前処分の寄附行為に基づく財団設立行為が主務官庁の許可によつてその効果の生じたことを必要とする。
遺言による寄附行為に基づく財団の設立行為がされたあとで遺言者の生前処分の寄附行為に基づく財団の設立行為がされた場合と遺言の取消
民法1023条
判旨
遺言による寄附行為の後にされた生前処分の寄附行為は、主務官庁の許可を得て効力が生じない限り、遺言と抵触し撤回されたものとはみなされない。また、遺言執行者は遺言の目的達成のために、財団設立準備委員会を組織し株式を同委員長名義へ書き換える等の相当な行為を行う権限を有する。
問題の所在(論点)
1. 遺言による寄附行為と競合する生前処分の寄附行為がなされた場合、どの時点で「抵触」(遺言の撤回)が生じるか。2. 財団設立を目的とする遺言において、遺言執行者が設立準備委員会を組織し、同代表者名義に株式の名義を書き換える行為は遺言執行者の権限範囲に含まれるか。
規範
1. 遺言による寄附行為と生前処分の寄附行為が競合する場合、後者の生前処分が遺言と抵触し遺言の撤回(民法1023条等)とみなされるためには、単なる設立手続のみでは足りず、主務官庁の許可等により法律上の効果が生じていることを要する。2. 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し(民法1012条1項)、その目的達成のために相当かつ適切と認める行為をすることができる。
重要事実
亡Dは、遺言により財団法人Eを設立する目的で寄附行為を行った。しかし、Dは生前にも別の財団法人Fを設立する目的で寄附行為を行っていた。その後、遺言執行者Gは財団法人E設立準備委員会を組織し、相続財産である本件株式を同委員長名義に名義書換する手続を行った。生前処分に基づく財団法人Fについては、主務官庁の許可を得ておらず、設立の効力は生じていなかった。上告人は、生前処分により遺言が取り消されたこと、および遺言執行者の行為が権限外であることを主張して争った。
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
あてはめ
1. 本件では、生前処分にあたる財団法人F設立の寄附行為は、主務官庁の許可を得ておらず、未だ法律上の効力を生じていない。したがって、遺言の内容と抵触する法的効果が発生しているとはいえず、遺言による財団法人E設立の寄附行為が取り消されたとはみなされない。2. 遺言執行者Gによる設立準備委員会の組織および株式の名義書換は、遺言の目的である「財団法人Eの設立」を確実に達成するために必要な準備行為であり、遺言の執行に必要な一切の行為として相当かつ適切と認められる。
結論
生前処分が効力を生じていない以上、遺言は撤回されたとはいえず有効である。また、遺言執行者の名義書換等の行為は権限の範囲内に属する。したがって、原判決は正当であり上告を棄却する。
実務上の射程
遺言による財団設立の事案において、民法1023条の『抵触』の判断基準を『効力の発生』に求めた点、および民法1012条の遺言執行者の権限が、目的達成のために必要な準備行為(設立準備委員会への名義書換等)にまで及ぶことを示した点で実務上重要である。答案では、遺言執行者の権限の広汎性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)907 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: 棄却
一、遺言による寄附行為に基づく財団法人の設立を目的として、判示のように、代表機関を持ち、寄附財産を独立に管理運用し活動する財団は、設立中の財団法人として法人格のない財団にあたり、訴訟上の当事者能力を有する。 二、遺言執行者が、遺言による寄附行為に基づく寄附財産として管理する相続財産の株式を、判示のように設立中の財団法人…
事件番号: 昭和44(オ)609 / 裁判年月日: 昭和44年10月28日 / 結論: 棄却
株式会社の役員であつた者に対する退職慰労金について、株主総会の決議により、その金額などの決定をすべて無条件に取締役会に一任することは許されないというべきであるが、これと異なり、株主総会の決議において、明示的もしくは黙示的に、その支給に関する基準を示し、具体的な金額、支払期日、支払方法などは右基準によつて定めるべきものと…
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和48(オ)794 / 裁判年月日: 昭和51年12月24日 / 結論: 棄却
一、株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても、株主である地方公共団体、株式会社が、その職制上上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使にあたつて法人の代表者の意図に反することができないようになつている職員又は従業員に議決権を代理行使させることは、右定款の規定に反しな…