一、株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても、株主である地方公共団体、株式会社が、その職制上上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使にあたつて法人の代表者の意図に反することができないようになつている職員又は従業員に議決権を代理行使させることは、右定款の規定に反しない。 二、株主総会決議取消の訴において、商法二四八条一項所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは、許されない。
一、株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合と株主である地方公共団体、株式会社の職員又は従業員による議決権の代理行使 二、株主総会決議取消の訴において商法二四八条一項所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することの許否
商法239条3項,商法247条,商法248条1項
判旨
株式会社が定款で代理人の資格を株主に限定している場合でも、法人株主がその職員等に代理行使させることは、攪乱のおそれがない等の特段の事情がない限り有効であり、また、決議取消事由の追加は提訴期間経過後は許されない。
問題の所在(論点)
1. 代理人の資格を株主に限定する定款規定がある場合、法人株主がその職員等に代理行使させることは許されるか。 2. 株主総会決議取消しの訴えにおいて、提訴期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されるか。
規範
1. 代理人の資格を株主に制限する定款規定(会社法310条1項参照)は、総会が第三者により攪乱されることを防止し会社の利益を保護する趣旨である。したがって、株主である法人がその職員等に代理行使させる場合、特段の事情のない限り、当該規定には反しない。 2. 株主総会決議取消しの訴え(会社法831条1項)において、瑕疵の主張を制限し決議の効力を早期に確定させる同条の趣旨から、提訴期間経過後の新たな取消事由の追加は許されない。
重要事実
事件番号: 昭和34(オ)250 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
一 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でも、その第三者は、当該訴訟の当事者となりうる適格を有しないかぎり、民訴第七五条の規定により、共同訴訟人として当該訴訟に参加することができない。 二 株主総会決議取消訴訟において被告となりうる者は、当該株式会社に限られる。
被告会社(被上告人)の定款には、代理人の資格を「他の出席株主」に限定する旨の規定があった。本件株主総会において、株主である地方公共団体(新潟県、直江津市)及び株式会社が、それぞれ自らの職員又は従業員を代理人として出席させ、議決権を行使させた。これに対し、原告(上告人)は、当該代理行使が定款に違反すると主張した。また、原告は提訴期間(当時は3か月)の経過後に、新たな取消事由(他の株主の議決権行使を認めなかった違法)を追加主張した。
あてはめ
1. 本件職員等は、法人の組織の一員として上司の命令に服する義務を負い、法人の代表者の意図に反する行動は困難である。このような場合、第三者による攪乱や会社の利益が害されるおそれはなく、むしろこれを否定すれば法人株主の議決権行使の機会を実質的に奪う不当な結果となるため、定款規定に反しない。 2. 決議は取消判決まで有効として扱われ、会社業務の基礎となる。提訴期間経過後の自由な事由追加を認めれば、会社は決議の有効性を予測できず不安定な状況に置かれ、早期確定という期間制限の趣旨が没却される。したがって、期間経過後の追加主張は認められない。
結論
1. 法人株主の職員等による代理行使は定款に反せず有効である。 2. 提訴期間経過後の新たな取消事由の追加は許されない。
実務上の射程
代理人資格制限規定の合憲・有効性を前提としつつ、法人株主による職員の派遣という実務上の必要性を調整する判例である。答案上は「攪乱のおそれ」の有無を検討する。取消事由の追加制限については、訴訟上の攻撃防御方法の制限として、民事訴訟法の一般原則(時機に遅れた攻撃防御方法)ではなく、会社法の早期確定の要請から導かれる特則として論じる必要がある。
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
事件番号: 昭和44(オ)609 / 裁判年月日: 昭和44年10月28日 / 結論: 棄却
株式会社の役員であつた者に対する退職慰労金について、株主総会の決議により、その金額などの決定をすべて無条件に取締役会に一任することは許されないというべきであるが、これと異なり、株主総会の決議において、明示的もしくは黙示的に、その支給に関する基準を示し、具体的な金額、支払期日、支払方法などは右基準によつて定めるべきものと…
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和40(オ)1206 / 裁判年月日: 昭和43年11月1日 / 結論: 棄却
一、商法第一二条は、当事者である株式会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。 二、議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限する旨の定款の規定は、有効である。