一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
一 株主は他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起できるか 二 株主総会の決議を取り消すことが不適当な場合と請求棄却の要否
商法247条
判旨
会社が正当な理由なく名義書換を拒絶した場合には、会社は当該株主を株主名簿未記載であることを理由に株主として扱うことを拒むことができず、また、他の株主に対する招集通知漏れを理由とする株主総会決議取消の訴えを提起することも認められる。
問題の所在(論点)
1. 会社が意図的に名義書換を妨害した場合、会社は名義欠缺を理由に新株主を株主として扱うことを拒否できるか。 2. 株主は、他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由に、株主総会決議取消の訴えを提起できるか。
規範
1. 会社が正当な理由なく名義書換を拒絶した場合、会社は名義書換を欠いていることを主張して新株主を株主として扱うことを拒絶することはできない(信義則)。 2. 株主は、自己に対する招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集通知が欠けている場合には、招集手続の瑕疵(会社法831条1項1号)を理由に決議取消の訴えを提起できる。
重要事実
被上告人らは、記名株式の譲渡を受け、会社に対し名義書換を請求した。しかし、会社の代表取締役は、自らと被上告人らとの紛争を有利に進めるため、株券を預かりながら名義書換を行わず、株券の返還も拒んで記名の補充を妨害した。その後、会社は書換を未了としたまま、新株主らに対して招集通知を発せずに株主総会を開催し、決議を行った。被上告人らは、他の株主(新株主Eら)への招集通知漏れを理由に決議取消の訴えを提起した。
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
あてはめ
1. 会社は名義書換請求を受けながら、代表取締役個人の利益のために意図的に書換をせず、記名補充を妨げている。このような状況で名義の欠缺を主張することは、自ら違法に阻止している補充権行使について不能を強いるものであり、誠実に書換をなすべき義務に反し、信義則上許されない。 2. 被上告人は株主であるから、自らへの通知に瑕疵がなくとも、正当な理由なく名義書換を拒絶された新株主Eらに対する通知漏れという瑕疵を援用して、決議の取消を求めることができる。
結論
会社は名義書換の欠缺を主張できず、招集通知を欠いた手続は違法である。また、株主は他者の招集手続の瑕疵を理由に決議取消の訴えを提起できるため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
会社側が不当に書換を拒否している「特段の事情」がある場合における名義書換未了株主の地位に関するリーディングケース。答案上は、会社側からの「名義書換がないため株主ではない」という反論に対し、信義則(または権利濫用)による再反論として構成する。また、取消事由の援用可能性についても本判例により一般的に認められている。
事件番号: 昭和34(オ)250 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
一 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でも、その第三者は、当該訴訟の当事者となりうる適格を有しないかぎり、民訴第七五条の規定により、共同訴訟人として当該訴訟に参加することができない。 二 株主総会決議取消訴訟において被告となりうる者は、当該株式会社に限られる。
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
事件番号: 昭和41(オ)868 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
株主である取締役は、当該取締役の解任に関する株主総会の決議については、商法第二三九条第五項にいう特別の利害関係を有する者にあたらない。
事件番号: 昭和39(オ)752 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
株券発行前になされた株式の譲渡は、会社設立後、通常、株券を発行しうる合理的期間経過後になされた場合であつても、会社に対してその効力を生じない。