株主である取締役は、当該取締役の解任に関する株主総会の決議については、商法第二三九条第五項にいう特別の利害関係を有する者にあたらない。
株主である取締役の解任に関する株主総会の決議について右株主は特別利害関係人にあたるか
商法239条5項
判旨
株主である取締役は、自身の解任に関する株主総会決議において、会社法831条1項3号(旧商法239条5項)の「特別の利害関係を有する者」には該当せず、議決権を行使できる。
問題の所在(論点)
取締役の解任決議において、解任対象となる取締役本人が株主である場合、会社法831条1項3号(旧商法239条5項)の「特別の利害関係を有する者」に該当し、議決権行使が制限されるか。
規範
「特別の利害関係を有する者」とは、株主がその地位を離れて純粋に個人的な利害関係を有するにすぎない場合(営業譲受や不法行為責任の免除等)を指す。一方で、取締役の選任・解任は、会社の支配・経営への参加という株主固有の権利の本質に関わる重要事項であるため、当該株主が役員本人であっても、株主としての正当な利害関係を有すると解すべきであり、原則として排除されない。
重要事実
株式会社の株主である取締役について、その解任を目的とする株主総会決議が行われた。当該取締役は、自身が「特別の利害関係を有する者」に該当し、議決権を行使できないのではないかが争点となった(旧商法239条5項の適用の是非)。
事件番号: 平成27(受)1431 / 裁判年月日: 平成28年3月4日 / 結論: 棄却
ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。 (補足意見がある。)
あてはめ
取締役の解任は、会社の支配・経営に関する最重要事項であり、株主の権利の本質に関わる。本件取締役は、解任により個人的地位を失う面もあるが、同時に株主として経営支配権を維持・行使するという重大な株主的利害を有している。株主は議決権行使にあたり自己の利益を図ることも許容されており、多数株式を有する結果として解任を免れることがあっても、それは株式会社制度における多数決原理の当然の帰結である。したがって、営業譲受のような純粋に個人的な利害関係の場合とは異なり、解任対象者であることをもって直ちに特別利害関係人と評価することはできない。
結論
株主である取締役は、自身の解任決議について特別の利害関係を有する者にあたらず、適法に議決権を行使することができる。
実務上の射程
役員の選任・解任決議において本件規範はそのまま妥当し、会社法831条1項3号の「著しく不当な決議」の検討前提として、特別利害関係人の該当性を否定するために用いる。ただし、議決権行使の結果が著しく不当な場合には、別途決議取消の訴え(同条同項3号)による救済の余地がある点に留意する。
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和40(オ)68 / 裁判年月日: 昭和41年8月26日 / 結論: 破棄差戻
一 株式会社の取締役会の定足数は、決議に特別の利害関係を有する取締役の員数を控除して算定すべきではない。 二 株式会社の取締役会の定足数は、開会時に充足されただけでは足りず、討議・議決の全過程を通じて維持されるべきであり、議決時にこれを欠くにいたつた場合には、当該決議は無効というべきである。
事件番号: 昭和34(オ)250 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
一 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でも、その第三者は、当該訴訟の当事者となりうる適格を有しないかぎり、民訴第七五条の規定により、共同訴訟人として当該訴訟に参加することができない。 二 株主総会決議取消訴訟において被告となりうる者は、当該株式会社に限られる。