一 株式会社の取締役会の定足数は、決議に特別の利害関係を有する取締役の員数を控除して算定すべきではない。 二 株式会社の取締役会の定足数は、開会時に充足されただけでは足りず、討議・議決の全過程を通じて維持されるべきであり、議決時にこれを欠くにいたつた場合には、当該決議は無効というべきである。
一 特別の利害関係を有する取締役と取締役会の定足数の算定 二 議決時に定足数を欠くにいたつた取締役会の決議の効力
商法260条ノ2,商法239条5項,商法240条2項
判旨
取締役会の定足数は、特別の利害関係を有する取締役の員数を控除せず現存する全取締役の員数を基礎として算定すべきであり、かつ、その充足は決議の全過程を通じて維持される必要がある。
問題の所在(論点)
会社法369条1項(旧商法260条の2第1項)に基づく取締役会の定足数算定において、特別利害関係人の員数を控除すべきか。また、定足数は会議のどの時点まで維持される必要があるか。
規範
取締役会の定足数は、当該会社に現存する全取締役の員数を基礎として算定すべきであり、決議につき特別の利害関係を有する取締役の員数を控除すべきではない。また、定足数は討議および議決の全過程を通じて維持されるべきである。その趣旨は、一定数以上の取締役が出席し、協議と意見の交換により英知を結集して結論を生み出すことを法が期待している点にある。したがって、決議時に定足数を欠く取締役会決議は無効である。
重要事実
被上告会社の取締役総数は4名であり、定足数は過半数の3名であった。臨時株主総会の招集を決議するため取締役会が開催され、当初は取締役4名のうち3名(E、D、F)が出席して審議に入った。しかし、取締役Dは審議の途中で勝手に退場した。その後、残った取締役EおよびFの2名のみで株主総会招集の決議を執り行った。
事件番号: 昭和41(オ)868 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
株主である取締役は、当該取締役の解任に関する株主総会の決議については、商法第二三九条第五項にいう特別の利害関係を有する者にあたらない。
あてはめ
本件では、取締役総数4名に対し定足数は3名である。取締役Dが特別の利害関係を有するか否かにかかわらず、定足数の基礎となる員数からDを控除することはできない。また、Dが審議途中で退場したことにより、決議時点では出席取締役が2名のみとなっており、算定の基礎となる定足数3名を下回っている。定足数は開会時だけでなく決議時にも充足している必要があるところ、本件決議時においては定足数を欠いていたといえる。
結論
定足数を欠く状態でなされた本件株主総会招集の取締役会決議は無効である。
実務上の射程
取締役会決議の効力を争う場面(株主総会取消事由としての招集手続法令違反など)で活用する。特別利害関係人が「議決に加わることができない」(会社法369条2項)ことと、定足数の算定基礎(員数)に含まれることは別問題である点に注意を要する。実務上、中途退席者による定足数割れのリスクを判断する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…
事件番号: 昭和44(オ)1112 / 裁判年月日: 昭和45年4月2日 / 結論: 棄却
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、右決議取消の訴は、訴の利益を欠くに至るものと解すべきである。 二、前項の場合であつても、右株主総会決議取消の訴が当…