一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、右決議取消の訴は、訴の利益を欠くに至るものと解すべきである。 二、前項の場合であつても、右株主総会決議取消の訴が当該取締役の在任中の行為について会社の受けた損害を回復することを目的とするものである旨の特別事情が立証されるときは、訴の利益は失われない。
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中に当該役員が退任した場合と訴の利益の有無 二、前項の場合において決議取消の訴がその利益を失わないとされる特別事情
商法247条,民訴法2編1章(訴)
判旨
役員選任の株主総会決議取消の訴えにおいて、決議により選任された役員の全員が任期満了等により退任し、後任者が選任された場合には、特別の事情がない限り訴えの利益を欠く。
問題の所在(論点)
株主総会での役員選任決議を対象とする取消しの訴えが係属中に、選任された役員が全員退任し、後任の役員が選任された場合、なお当該決議を取り消す「訴えの利益」(会社法831条1項、民事訴訟法上の一般的要件)が認められるか。
規範
株主総会決議取消の訴えは形成の訴えであり、当初は訴えの利益が存する場合であっても、その後の事情の変化により利益を欠くに至ることがある。役員選任決議の取消しの訴えにおいて、当該決議に基づき選任された役員がすべて任期満了により退任し、後の総会で新役員が選任された結果、取消対象の決議に基づく役員が現存しなくなったときは、特別の事情のない限り、訴えは実益を欠き、訴えの利益は消滅する。
重要事実
上告人らは、会社が役員を選任した株主総会決議の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟の係属中に、当該決議によって選任された取締役らは全員が任期満了によって退任し、その後の別の株主総会決議によって新たな取締役らが選任された。上告人側は、取消し得べき決議に基づき選任された取締役の在任中の行為による会社の損害を回復するために取消しの利益がある旨を主張したが、具体的な立証はなされなかった。
あてはめ
本件では、取消しの対象となっている総会決議で選任された取締役らは全員が既に任期を終了して退任している。したがって、当該決議を取り消したとしても、現在の役員の地位に直接の影響を及ぼすものではない。上告人は、在任中の取締役の行為による会社損害の回復という「会社の利益」のために訴訟を継続する必要があると主張するが、本件取消しの訴えが会社のために必要であることについて特段の立証がなされていない。そのため、訴えを維持すべき「特別の事情」は認められず、訴えの利益は失われていると解される。
結論
役員選任決議に係る取消しの訴えは、対象となる役員の全員が退任し後任が選任されたことにより、特別の事情がない限り、訴えの利益を欠き却下されるべきである。
実務上の射程
役員選任決議の効力を争う場面での「訴えの利益」の存否を判断する際のリーディングケースである。答案上は、役員の退任という事後的な事情がある場合に、原則として訴えの利益が消滅することを示した上で、例外的に「特別の事情」(例えば当該決議の存在自体が法的紛争の根源となっており、取消しにより具体的利益が回復される場合等)の有無を事実関係から検討する枠組みとして用いる。
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。