判旨
取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。
問題の所在(論点)
株主総会決議により選任された取締役が既に退任し、後任者の選任登記も済んでいる場合において、当該決議の無効確認を求める法律上の利益(確認の利益)が認められるか。
規範
確認の訴えが適法であるためには、即時確定を必要とする現在の法律上の利益(確認の利益)が存在しなければならない。既に決議の効力が過去のものとなり、現状に直接の変動を及ぼさない場合には、原則として確認の利益は失われる。
重要事実
上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた。しかし、DおよびEは訴訟継続中の昭和31年6月にいずれも辞任し、その登記は抹消され、即日後任者が選任されてその登記も完了していた。
あてはめ
本件では、対象となる決議で選任されたDおよびEは既に辞任しており、登記上も後任者に代わっている。上告人は、彼らが在任中に代表者として行った各種法律行為の効力を争う前提として本件決議の無効確認が必要であると主張するが、それは過去の法律関係の前提にすぎない。このような事情は、現在の法的地位に直接影響を及ぼす「即時確定を必要とする現在の法律上の利益」があるとはいえない。
結論
本件決議の無効確認を求める請求は、法律上の利益を欠き不適法である。
実務上の射程
会社法上の各種訴え(決議取消・無効・不存在)において、役員の任期満了や辞任による「訴えの利益」の消滅を論じる際のリーディングケースである。過去の行為の有効性を争うために決議の効力を争う必要がある場合は、決議の無効確認ではなく、当該行為(契約等)の効力確認等を直接求めるべきという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)4 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】役員選任決議の無効および役員の地位不存在の確認を求める訴えにおいて、対象となる役員が既に退任し、その後の役員でないことが明白である場合には、確認の利益を欠く。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会議所が昭和25年6月28日の議員総会で行った役員選任決議が無効であること、および特定の個人が副会頭の地…
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)992 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 棄却
一 新株がすでに発行された後は、新株発行無効の訴を提起しないかぎり、当該新株の発行を無効とするに由なく、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴は、確認の利益がない。 二 株主総会決議無効確認の訴を提起して請求棄却の確定判決を受けた者が、後の株主総会で行なわれた右決議内容再確認の決議に対し、更に無効確認の訴を提起しても…
事件番号: 昭和44(オ)1112 / 裁判年月日: 昭和45年4月2日 / 結論: 棄却
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、右決議取消の訴は、訴の利益を欠くに至るものと解すべきである。 二、前項の場合であつても、右株主総会決議取消の訴が当…