一 新株がすでに発行された後は、新株発行無効の訴を提起しないかぎり、当該新株の発行を無効とするに由なく、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴は、確認の利益がない。 二 株主総会決議無効確認の訴を提起して請求棄却の確定判決を受けた者が、後の株主総会で行なわれた右決議内容再確認の決議に対し、更に無効確認の訴を提起しても、訴の利益はない。
一 新株の発行があつた場合と新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴の利益。 二 確定判決で無効でないと確認された決議の内容を再確認した決議に関する株主総会決議無効確認の訴と訴の利益。
商法252条,商法280条ノ2,商法280条ノ15,民訴法225条
判旨
新株発行後の株主総会決議無効確認の訴えは、新株発行無効の訴えによらない限り新株発行の効力を否定できないため、特段の事情がない限り確認の利益を欠く。また、既に確定判決により効力が争えなくなった前決議の内容を再確認するだけの後行決議についても、その効力を争う利益は認められない。
問題の所在(論点)
1. 新株発行が完了した後に、その前提となる株主総会決議の無効確認を求める訴えに「訴えの利益」が認められるか。 2. 既に効力が確定した前決議を再確認するだけの後行決議につき、独立して無効確認を求める実益があるか。
規範
1. 新株発行に関する株主総会決議(募集事項の決定等)に基づき、既に新株が発行された場合、当該発行の効力は「新株発行無効の訴え」(会社法828条1項2号)という組織法上の訴えによってのみ争いうる。したがって、新株発行後は、前提となる株主総会決議のみの無効確認を求める訴えは、確認の利益を欠き不適法となる。 2. また、特定の決議内容の効力を争う訴えが既に確定判決により排斥されている場合、その決議内容を単に再確認するにすぎない後行の決議について無効を主張することも、紛争解決の実益がないため、訴えの利益を欠く。
重要事実
事件番号: 昭和39(オ)752 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
株券発行前になされた株式の譲渡は、会社設立後、通常、株券を発行しうる合理的期間経過後になされた場合であつても、会社に対してその効力を生じない。
上告人は、被上告会社の株主総会における二つの決議(第一決議、第二決議)の無効確認を求めた。第一決議は、過去の定款変更決議(発行可能株式総数の増加)の内容を再確認するものであったが、当該過去の決議については既に無効確認の訴えが棄却され、上告人敗訴の判決が確定していた。第二決議は、新株発行に関する決議(旧商法280条ノ2第2項)であったが、本件訴訟の時点ですでに当該決議に基づく新株発行の効力が発生し、発行済の状態にあった。
あてはめ
1. 第二決議について:本件では第二決議に基づく新株が既に発行済みであることが確定している。新株発行という法的状態が形成された後は、新株発行無効の訴えという特別な手段によらない限り、その効力を覆すことはできない。ゆえに、決議の無効のみを確認しても発行済みの株式に影響を及ぼし得ず、確認の利益を欠くといえる。 2. 第一決議について:第一決議は、昭和29年の定款変更決議の内容を再確認するものにすぎない。当該昭和29年の決議については、上告人による無効確認の訴えが最高裁で棄却され、既にその有効性が確定している。したがって、もはや内容を争い得なくなった上告人にとって、再確認決議の効力を争うことは紛争解決上の実益を欠くといえる。
結論
本件各決議の無効確認を求める請求は、いずれも訴えの利益(確認の利益)を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
会社法上の組織再編や資金調達において、決議の瑕疵を理由に訴えを提起する場合の「訴えの利益」の限界を示す。新株発行後は、決議無効の訴え(830条)ではなく発行無効の訴え(828条1項2号)に一元化されるという実務上の通説的見解を裏付ける射程を持つ。答案上は、事後的な救済手段の選択を誤らないよう注意を促す論拠として使用する。
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…
事件番号: 昭和39(オ)883 / 裁判年月日: 昭和47年11月8日 / 結論: その他
株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
事件番号: 昭和39(オ)1062 / 裁判年月日: 昭和40年10月8日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、新株引受権を株主以外の者に付与することについての株主総会の特別決議を経ることなく右株主以外の者に引受権を付与して発行されたものであつても、その瑕疵は新株発行無効の原因とならない。
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…