株券発行前になされた株式の譲渡は、会社設立後、通常、株券を発行しうる合理的期間経過後になされた場合であつても、会社に対してその効力を生じない。
株券の発行前における株式の譲渡の効力
商法204条2項
判旨
株券発行前になされた株式の譲渡は、会社成立後であって株券を発行し得る合理的期間が経過した後になされたものであっても、会社に対してはその効力を生じない。
問題の所在(論点)
会社法(当時の商法)の下、株券発行前に行われた株式譲渡は、会社成立から株券発行に要する合理的期間が経過した後になされた場合、会社に対して効力を有するか。株券発行前譲渡の制限(会社法128条2項参照)の例外が認められるかが問題となる。
規範
株券発行事項付与会社における株券発行前の株式譲渡は、会社成立後または新株発行の効力発生後の期間経過(株券発行の失念や遅滞)の有無を問わず、会社に対してその効力を生じない。
重要事実
本件において、上告人は株式を譲り受けたが、その譲渡は会社成立後、通常であれば株券を発行し得る合理的期間が経過した後に行われたものであった。しかし、当該譲渡の時点で株券は発行されていなかった。上告人は、期間経過後の譲渡であることを理由に会社に対する効力を主張して争った。
事件番号: 昭和34(オ)250 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
一 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でも、その第三者は、当該訴訟の当事者となりうる適格を有しないかぎり、民訴第七五条の規定により、共同訴訟人として当該訴訟に参加することができない。 二 株主総会決議取消訴訟において被告となりうる者は、当該株式会社に限られる。
あてはめ
最高裁は、先行する判例(最判昭33・10・24)を維持する立場を明確に示した。具体的には、会社成立後に株券が発行されないまま合理的期間が経過したという事実があったとしても、株券発行前である以上、その譲渡を会社に認めさせる法的根拠はないと判断した。これにより、期間の経過という事実によって譲渡の効力が治癒されることはないといえる。
結論
株券発行前の株式譲渡は会社に対して効力を生じない。したがって、合理的期間経過後の譲渡であっても会社に対する関係では無効である。
実務上の射程
本判決は、株券発行事項付与会社における「株券発行前の譲渡」の会社に対する効力を一律に否定したものである。現在の会社法128条2項の原則(権利移転の効力不発生)を厳格に解釈する際の根拠となる。ただし、会社が譲渡を承認した場合や、株券発行義務を懈怠している場合に信義則(法128条2項ただし書、権利濫用等)が適用される余地については、本判決の射程外として別途検討を要する。
事件番号: 昭和38(オ)992 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 棄却
一 新株がすでに発行された後は、新株発行無効の訴を提起しないかぎり、当該新株の発行を無効とするに由なく、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴は、確認の利益がない。 二 株主総会決議無効確認の訴を提起して請求棄却の確定判決を受けた者が、後の株主総会で行なわれた右決議内容再確認の決議に対し、更に無効確認の訴を提起しても…
事件番号: 昭和39(オ)883 / 裁判年月日: 昭和47年11月8日 / 結論: その他
株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。