一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条の削除と裁判所の裁量権 二 株主総会の決議に軽微でない手続上の瑕疵がある場合と裁判所の裁量権
商法247条,商法251条(昭和25年法律167号による削除前のもの)
判旨
株主総会において招集通知に記載のない事項を決議したことは、軽微な手続上の瑕疵とはいえず、原則として決議取消事由となる。また、裁判所が条理上当然に取消を認めないとする裁量権(現行法上の裁量棄却)の行使は、旧商法の規定削除により認められない。
問題の所在(論点)
招集通知に記載のない事項についての決議が「招集の手続が法令に違反するとき」(会社法831条1項1号)に該当するか。また、明文規定がない場合でも裁判所に決議取消しを否定する裁量権が認められるか。
規範
1. 予め総会決議事項の通知をしなかったことは、軽微な手続上の瑕疵とはいえない。 2. 招集通知に欠ける事項についての決議は、決議取消しの訴えにおいて取り消されるべきである。 3. 明文の規定がない限り、裁判所が条理上当然に取消を否定できるような裁量権は認められない。
重要事実
上告人(会社側)は、株主総会の招集通知において会議の目的事項として予め通知していなかった事項について、総会で決議を行った。これに対し、株主側が当該決議の取消しを求めて提訴した。上告人は、旧商法251条が削除された後も、条理上裁判所には同様の裁量権(瑕疵が軽微で結果に影響しない場合に取消を認めない権限)があると主張した。
あてはめ
本件では、総会決議事項の事前通知が欠如している。この事実は株主の議決権行使の機会を奪うものであり、軽微な手続上の瑕疵ということはできない。したがって、手続に重大な瑕疵があるといえる。また、裁量権の根拠となっていた旧規定が削除されている以上、条理を根拠に裁判所が裁量で取消を免れさせることは許されないと解される。
結論
本件決議には取消事由が存在し、裁判所は裁量によってこれを取り消さないことはできないため、当該決議は取り消されるべきである。
実務上の射程
本判決は現行会社法831条2項(裁量棄却)が制定される前の事案であるが、招集通知漏れが「軽微な瑕疵ではない」とする判断枠組みは、現行法下での裁量棄却の可否を検討する際の重要な考慮要素となる。実務上、目的事項外の決議は原則として取消対象となることを示した重要な先例である。
事件番号: 昭和43(オ)913 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 棄却
株主総会における数個の決議の取消を求める訴において、各決議の取消原因として、株主総会につき発せられた招集通知期間に判示のような著しい不足があるのみならず、一個の決議を除く他の決議については、招集通知に会議の目的たる事項の記載がなかつたという瑕疵があるときは、これらの瑕疵は軽微とはいえず、すべての決議について、その取消を…
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和44(オ)89 / 裁判年月日: 昭和46年3月18日 / 結論: その他
一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等からみて重大なかしがある場合には、そのかしが決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、右決議の取消請求を認容すべきであつて、これを裁量棄却することは許されない。 二、株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議…