一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等からみて重大なかしがある場合には、そのかしが決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、右決議の取消請求を認容すべきであつて、これを裁量棄却することは許されない。 二、株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議に基づかないでなされたものであるのみならず、その招集の通知が、すべての株主に対して法定の招集期間に二日足りない会日より一二日前になされたものであるときは、右株主総会招集の手続には、右総会の決議の取消請求を裁量棄却することの許されない重大なかしがあるというべきである。
一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に重大なかしがある場合と決議取消請求の裁量棄却 二、株主総会招集の手続に決議取消請求を裁量棄却することの許されない重大なかしがあるとされた事例
商法247条,商法231条,商法232条1項
判旨
株主総会招集手続に重大な瑕疵がある場合には、その瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認められるときであっても、裁判所は裁量棄却をすることができない。
問題の所在(論点)
株主総会招集手続に取締役会決議の欠如および法定招集期間の徒過という瑕疵がある場合、会社法831条2項に基づき、瑕疵が決議の結果に影響しないことを理由として請求を棄却(裁量棄却)することができるか。
規範
株主総会招集の手続または決議方法を厳格に規制する趣旨は、総会の適正な運営を確保し、株主および会社の利益を保護することにある。したがって、手続上の瑕疵がその性質・程度等から見て重大である場合には、仮に当該瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認められるときであっても、会社法831条2項による裁量棄却を認めることはできない。
重要事実
被告会社の臨時株主総会において、会社の解散、監査役および法定清算人の選任の各決議がなされた。しかし、当該総会の招集手続は、招集決定権限を有する取締役会の有効な決議に基づかずに行われたものであった。さらに、全株主に対する招集通知が、法定の招集期間(会日の2週間前)に2日不足する「12日前」になされていた。
事件番号: 昭和43(オ)913 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 棄却
株主総会における数個の決議の取消を求める訴において、各決議の取消原因として、株主総会につき発せられた招集通知期間に判示のような著しい不足があるのみならず、一個の決議を除く他の決議については、招集通知に会議の目的たる事項の記載がなかつたという瑕疵があるときは、これらの瑕疵は軽微とはいえず、すべての決議について、その取消を…
あてはめ
本件における招集手続は、取締役会の有効な決議を欠いているだけでなく、法定期間を2日も下回る通知でなされている。このような瑕疵は、株主総会の適正な運営を確保しようとする法の趣旨に照らし、その性質および程度において「重大な瑕疵」にあたるといえる。したがって、たとえこれらの瑕疵が決議の結果に具体的な影響を及ぼさなかったとしても、重大な瑕疵が存在する以上、裁量棄却の要件を満たさないと解される。
結論
招集手続に重大な瑕疵があるため、本件各決議は取り消されるべきであり、裁量棄却による請求棄却は認められない。
実務上の射程
裁量棄却の限界を画した重要判例である。招集通知漏れが一部の少数株主に留まる場合(結果に影響しない場合)と、本件のように招集権限や招集期間といった手続の根幹に関わる瑕疵がある場合を区別し、後者は一律に裁量棄却を否定する論理として機能する。
事件番号: 昭和55(オ)193 / 裁判年月日: 昭和55年6月16日 / 結論: 棄却
二七〇〇株の株主に対する株主総会の招集通知に法定の招集期間より六日足りない瑕疵がある場合であつても、右株主に対しては代表取締役があらかじめ総会の議題を話しており、右株主も総会が右株主の住居と同一建物内で開催されることを熟知しながら意識的に出席を拒否したものであり、かつ、他の七三〇〇株の株主全員が出席して全会一致で解散の…
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)711 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
株主総会の議事録は、総会に関する事実の記録であり、証拠文書として作成を要求されているが、これを作成しなくても決議の効力には影響なく、その記載の不備により議事録自体の効力を左右するものではない。