株主総会における数個の決議の取消を求める訴において、各決議の取消原因として、株主総会につき発せられた招集通知期間に判示のような著しい不足があるのみならず、一個の決議を除く他の決議については、招集通知に会議の目的たる事項の記載がなかつたという瑕疵があるときは、これらの瑕疵は軽微とはいえず、すべての決議について、その取消を不適当とする事情がある場合にあたるとは到底認められない。
株主総会の決議の取消を不適当する事情がある場合にあたらないとされた事例
商法232条,商法247条
判旨
株主総会の招集通知期間に著しい不足があり、かつ会議の目的事項の記載を欠くような瑕疵は、株主の準備機会を奪うものであり軽微とはいえないため、裁量棄却をすべきではない。また、株主が代理人により議決権を行使する場合、代理権を証する書面を提出しなければその行使は許されない。
問題の所在(論点)
1. 招集通知期間の著しい不足および議題記載の欠如がある場合に、裁判所は決議を取り消すべきか(裁量棄却の可否)。 2. 代理権を証する書面の提出がない代理人による議決権行使は認められるか。
規範
1. 株主総会決議の取消しの訴えにおいて、手続上の瑕疵が軽微ではなく、かつ決議に影響を及ぼさない特段の事情がない場合には、会社法831条2項(旧商法251条)による裁量棄却は認められない。 2. 代理人による議決権行使(会社法310条1項、旧商法239条)において、代理人は委任状等の代理権を証する書面を会社に提出しなければ、議決権を代理行使することはできない。
重要事実
上告会社は、株主総会の招集通知に関し、法定の2週間に対し6日ないし7日前という著しく短い期間で発送した。また、決算報告の承認以外の議案については会議の目的事項(議題)の記載を欠いていた。さらに、株主の代理人と称する者が総会に出席したが、代理権を証する書面を提出していなかった。これに対し、株主である被上告が決議取消しの訴えを提起したところ、会社側は瑕疵が決議に影響しないこと等を理由に裁量棄却を主張した。
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
あてはめ
1. 招集通知期間の確保や議題の明示は、株主が議決権行使に向けた十分な準備の機会を得るための法の重要な趣旨に基づく。本件では通知期間が法定の半分以下であり、かつ議題の記載すら欠く議案がある。これらは株主の権利行使を妨げる重大な瑕疵であり、「軽微な瑕疵」とは到底いえず、決議結果に影響しない特段の事情も立証されていないため、裁量棄却は不適当である。 2. 代理権の証書提出は法定の要件であり、提出がない限り適法な代理行使とは認められない。したがって、証書を持参しなかった者の出席を認めても瑕疵は治癒されない。
結論
1. 招集手続に重大な瑕疵があるため、裁量棄却をせず決議を取り消した原審の判断は正当である。 2. 代理権を証する書面の不提出により、議決権の代理行使は認められない。
実務上の射程
裁量棄却(会社法831条2項)の適用の限界を示す重要判例である。通知期間不足が数日程度なら裁量棄却の余地があるが、本件のように期間が著しく不足し、かつ議題記載も欠く場合は、法の趣旨(準備機会の確保)を没却するため、取消原因となる。答案上は、瑕疵の程度を評価する際に「株主が十分な準備をする機会が確保されたか」という観点から論じる。また、代理権証書の不提出については、会社法310条1項の解釈として不可欠の要件であることを示す際に用いる。
事件番号: 昭和44(オ)89 / 裁判年月日: 昭和46年3月18日 / 結論: その他
一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等からみて重大なかしがある場合には、そのかしが決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、右決議の取消請求を認容すべきであつて、これを裁量棄却することは許されない。 二、株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議…
事件番号: 昭和41(オ)664 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。