二七〇〇株の株主に対する株主総会の招集通知に法定の招集期間より六日足りない瑕疵がある場合であつても、右株主に対しては代表取締役があらかじめ総会の議題を話しており、右株主も総会が右株主の住居と同一建物内で開催されることを熟知しながら意識的に出席を拒否したものであり、かつ、他の七三〇〇株の株主全員が出席して全会一致で解散の決議をしたなど、原判示のような事情のもとにおいては、決議取消請求を棄却するのが相当である。
株主総会招集手続に瑕疵がある場合であつても決議取消請求を棄却するのが相当であるとされた事例
商法232条1項,商法247条
判旨
株主総会の招集通知に瑕疵がある場合であっても、議事の経過その他の事情に照らし、その瑕疵が決議の結果に影響を及ぼすものでないと認められるときは、裁判所は決議取消の請求を棄却することができる。
問題の所在(論点)
株主総会の招集通知に瑕疵がある場合において、会社法831条2項(当時の旧商法251条、248条1項)に基づく裁量棄却が認められるための判断基準。
規範
株主総会決議の取消事由(会社法831条1項各号)に該当する瑕疵が存在する場合であっても、当該瑕疵が「決議に影響を及ぼさない」と認められるときは、裁量棄却(同条2項)の対象となり得る。具体的には、招集手続等の瑕疵の程度、議事の経過、賛成票の数、瑕疵がなかったとしても結果が変わり得たか否か等の諸事情を総合考慮して判断する。
重要事実
上告人A(株主)に対し、本件株主総会の招集通知を発する際、原判決が認定した態様の瑕疵が存在した。しかし、当該瑕疵がある中で開催された総会において、議事の経過やその他の具体的事情が審理された結果、瑕疵がなければ決議の結果が異なっていたとは言い難い状況であった。
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
あてはめ
本件では、上告人Aに対する招集通知に瑕疵があったことは事実である。しかし、総会の「議事の経過その他の事情」を精査すると、当該瑕疵がなければ決議が否決された、あるいは内容が変更されたといった事実は窺えない。したがって、招集通知の不備という手続的瑕疵は、決議の結果に影響を及ぼすものとは認められないと評価される。
結論
本件招集通知の瑕疵は決議の結果に影響を及ぼすものではないため、決議取消の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
会社法831条2項の「裁量棄却」の要件である「決議に影響を及ぼさないと認めるとき」の判断手法を示す重要な先例である。答案上は、軽微な手続違反がある事案において、議決権数や議事の混乱の有無などを具体的事実として拾い、本判例を根拠に「結果に影響がない」と論じる際に活用する。
事件番号: 昭和44(オ)89 / 裁判年月日: 昭和46年3月18日 / 結論: その他
一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等からみて重大なかしがある場合には、そのかしが決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、右決議の取消請求を認容すべきであつて、これを裁量棄却することは許されない。 二、株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議…
事件番号: 昭和43(オ)913 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 棄却
株主総会における数個の決議の取消を求める訴において、各決議の取消原因として、株主総会につき発せられた招集通知期間に判示のような著しい不足があるのみならず、一個の決議を除く他の決議については、招集通知に会議の目的たる事項の記載がなかつたという瑕疵があるときは、これらの瑕疵は軽微とはいえず、すべての決議について、その取消を…