計算書類等承認の株主総会決議取消の訴えの係属中、その後の決算期の計算書類等の承認がされた場合であつても、該計算書類等につき承認の再決議がされたなどの特別の事情がない限り、右決議取消を求める訴えの利益は失われない。
計算書類等承認の株主総会決議取消の訴えの係属中にその後の決算期の計算書類等の承認がされた場合と右取消を求める訴えの利益
商法(昭和49年法律第21号による改正前のもの)247条1項,商法(昭和49年法律第21号による改正前のもの)283条1項,民訴法2編1章 訴
判旨
計算書類等の承認決議に取消事由がある場合、次期以降の決算が確定していても、当該決議の再決議がなされない限り訴えの利益は失われない。修正動議の目的が事後的に達成されたとしても、手続的瑕疵の治癒は認められず、訴えの利益は存続する。
問題の所在(論点)
計算書類等の承認決議の取消を求める訴えにおいて、(1)次期以降の決算が承認確定していること、または(2)決議後に修正動議の内容が事実上実現されたことは、訴えの利益を消滅させる「特別の事情」に当たるか(会社法831条、民訴法上の訴えの利益)。
規範
株主総会決議取消の訴えは、勝訴判決の確定により決議が遡及的に無効となる。計算書類の承認決議が取り消されれば、法律上再決議が必要となる。したがって、当該議案につき再決議がされたなどの特別の事情がない限り、訴えの利益は失われない。この「特別の事情」は、次期以降の計算書類等が承認確定されたことや、瑕疵の内容となった要求が事実上充足されたことによっては認められない。
重要事実
上告会社(チッソ)の第42期定時株主総会において、営業報告書・計算書類の承認及び利益処分案の決議がなされた。株主である被上告人らは、株主の入場制限や修正動議(水俣病補償積立金等の計上)の無視といった手続上の瑕疵を理由に、決議取消の訴えを提起した。これに対し会社側は、①既に第43期以降の決算案も承認確定しており、第42期の決議取消は後続決算に影響しないこと、②修正動議で求めていた額以上の補償金が後に支出され、動議の目的は達成されたことを理由に、訴えの利益の消滅を主張した。
あてはめ
(1)決議が取り消されれば計算書類等は未確定となり、それを前提とする次期以降の計算書類等の記載内容も不確定になる。したがって、会社は改めて取消対象となった期の計算書類の承認決議を行う義務を負うため、後続期の決算確定は訴えの利益を消滅させる理由とならない。(2)本件訴えは入場制限や修正動議無視という「手続的瑕疵」を理由とするものである。修正動議の内容が後日実現されたとしても、それは決議の手続的瑕疵自体を治癒するものではない。よって、これらの事情はいずれも「特別の事情」には該当しない。
結論
本件決議につき再決議がなされたなどの特段の事情がない限り、計算書類等の承認決議の取消しを求める訴えの利益は失われない。
実務上の射程
計算書類承認決議の取消しにおける訴えの利益について、遡及効と再決議の必要性から広く肯定するものである。答案上は、決議後に事情変更(後続決算の確定や実質的な問題の解消)が生じたケースで、訴えの利益の有無を論じる際の基準として活用する。特に計算書類が連鎖する性質を強調して論理を展開する。
事件番号: 昭和55(オ)193 / 裁判年月日: 昭和55年6月16日 / 結論: 棄却
二七〇〇株の株主に対する株主総会の招集通知に法定の招集期間より六日足りない瑕疵がある場合であつても、右株主に対しては代表取締役があらかじめ総会の議題を話しており、右株主も総会が右株主の住居と同一建物内で開催されることを熟知しながら意識的に出席を拒否したものであり、かつ、他の七三〇〇株の株主全員が出席して全会一致で解散の…
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…