株主総会の議事録は、総会に関する事実の記録であり、証拠文書として作成を要求されているが、これを作成しなくても決議の効力には影響なく、その記載の不備により議事録自体の効力を左右するものではない。
株主総会の議事録の不備と決議および議事録自体の効力
商法244条
判旨
株主総会議事録は総会に関する事実の記録であり、その作成の有無や記載の不備は、株主総会決議の効力に直接的な影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
株主総会議事録の不作成または記載内容の不備が、株主総会決議の効力に影響を及ぼすか(決議の取消事由や無効原因となるか)。
規範
株主総会議事録は、総会に関する事実を記録する証拠文書として作成が要求されているにすぎない。したがって、議事録の作成を欠くことや、その記載内容に不備があることは、議事録自体の効力を左右するものであっても、すでになされた株主総会決議の効力そのものに影響を及ぼすものではない。
重要事実
上告人は、対象となる株主総会において、議事録の作成に不備があること、上告人が不当に決議への参加を拒否されたこと、招集の取消しの効力、および決議内容が公序良俗に反すること等を主張して、決議の無効ないし取消しを求めて争った。原審は、上告人が決議参加を拒否された事実を認めるに足りる証拠がないとし、また招集取消の効力や公序良俗違反も否定した。これに対し、上告人は議事録の不備等が決議の効力に影響する旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
あてはめ
議事録はあくまで総会の経過を事後的に証明するための「証拠文書」としての性質を有するにとどまる。本件において、たとえ議事録の作成に不備があったとしても、それは決議成立後の手続上の不備にすぎない。決議の効力は、総会における意思決定のプロセスそのものの適法性によって判断されるべきであり、その記録にすぎない議事録の瑕疵によって遡及的に決議が不成立となったり、取り消されたりするものではない。また、不当な参加拒否等の他の違法事由も認められない以上、決議は有効である。
結論
議事録の不作成や記載の不備は、株主総会決議の効力に影響を及ぼさない。
実務上の射程
会社法318条に基づく議事録作成義務違反(過料の対象)と、決議自体の効力を切り離して考える際の根拠となる。答案上は、決議取消の訴え(会社法831条1項)において、総会後の議事録不備を「招集の手続又は決議の方法」の瑕疵として主張された場合、本判例を引いて瑕疵を否定する、あるいは瑕疵であっても決議の効力に影響しない(裁量棄却の考慮要素等)とする構成に活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…
事件番号: 昭和44(オ)89 / 裁判年月日: 昭和46年3月18日 / 結論: その他
一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等からみて重大なかしがある場合には、そのかしが決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、右決議の取消請求を認容すべきであつて、これを裁量棄却することは許されない。 二、株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議…
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…
事件番号: 昭和38(オ)992 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 棄却
一 新株がすでに発行された後は、新株発行無効の訴を提起しないかぎり、当該新株の発行を無効とするに由なく、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴は、確認の利益がない。 二 株主総会決議無効確認の訴を提起して請求棄却の確定判決を受けた者が、後の株主総会で行なわれた右決議内容再確認の決議に対し、更に無効確認の訴を提起しても…