解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
登記原因に齟齬ある場合の登記の効力
非訟事件手続法149条,商法67条,商法188条3項
判旨
役員の資格消滅の事由が真実と異なる場合であっても、資格消滅という身分変動の事実自体が真実と合致しているときは、その登記は有効であり、抹消を求めることはできない。
問題の所在(論点)
役員が実際には「解任」によって資格を喪失したにもかかわらず、登記簿上に「辞任」と記載された場合、その登記は実体関係に反する無効なものとして抹消されるべきか。
規範
登記の効力は、実体的な権利関係または法的地位の変動を正しく公示しているか否かによって判断される。登記された事項のうち、変動の「事由(原因)」が真実と異なっていたとしても、変動の「結果(身分変動の有無)」が真実と合致している場合には、その登記は実体関係に反するものとはいえず、有効なものとして取り扱うべきである。
重要事実
株式会社B製作所の株主総会において、取締役A1が解任され、他の役員3名が辞任を承認された。しかし、A1一人のみが解任されるのは外観上好ましくないとの配慮から、全員が「辞任」したとする真実と異なる議事録が作成され、これに基づき登記がなされた。後に上告人らは、登記上の原因が真実ではないことを理由に、当該登記の無効を主張した。
事件番号: 昭和54(オ)410 / 裁判年月日: 昭和54年11月16日 / 結論: 棄却
株主総会決議無効確認の訴の決議無効原因として主張された瑕疵が決議取消原因に該当し、しかも、右訴が決議取消訴訟の出訴期間内に提起されている場合には、決議取消の主張が出訴期間経過後にされたとしても、右決議取消の訴は出訴期間の関係では決議無効確認の訴提起時に提起されたのと同様に扱うのが相当である。
あてはめ
本件において、取締役A1が株主総会の決議によりその資格を失った事実は真実である。登記簿上の「辞任」という記載は、資格消滅の「事由」については真実と異なるものの、役員としての資格が消滅したという「身分変動の結果」については真実と合致している。したがって、登記の公示機能に照らし、実体的な身分変動が正確に反映されている以上、原因の相違を理由として登記を無効と解することはできない。
結論
登記された資格消滅の事由が真実と異なっても、資格消滅の事実自体が真実である限り、その登記は有効であり、抹消請求は認められない。
実務上の射程
登記の有効性が争われる場面において、原因(事由)の瑕疵と結果(変動の存否)を切り分ける判断枠組みとして機能する。司法試験においては、不実の登記の抹消請求の可否や、登記を信頼した第三者保護の前提となる登記の有効性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。