一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなした場合の決議の効力。 二 会社が株主名簿に氏名を記載されない株式取得者を株主として取扱うことの可否。
一 商法 第二五二条二 商法 第二〇六条第一項
判旨
会社が株主名簿の書換を懈怠した株式譲受人を株主として遇することは、会社がその者の株主たることを否認した形跡がない限り妨げられず、当該株式を決議の定足数等に算入したことは適法である。
問題の所在(論点)
株主名簿の書換を行っていない株式譲受人を、会社側が自発的に株主として扱い、その株式を決議の有効数に算入することの可否(会社法130条1項参照、旧商法206条1項)。
規範
株主名簿の書換がなされていない株式の譲受人は、会社に対して株主たる権利を対抗することはできない。しかし、会社側から名簿書換未了の譲受人を株主として認め、その権利行使を認めることは妨げられない。
重要事実
上告人らは会社(被上告人)の総会決議の無効ないし取消しを求めて争った。問題となったのは、株式の譲受人であるDが所有する1500株である。Dは株主名簿の書換を完了していなかったが、会社側はDの株主権を否認せず、当該株式を決議成立に必要な有効株式数に計上して決議を行った。また、Dに対する招集通知が欠けていた点も争点となった。
事件番号: 昭和39(オ)883 / 裁判年月日: 昭和47年11月8日 / 結論: その他
株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
あてはめ
被上告会社は、名簿書換未了のDについて、その株主たることを否認した形跡が認められない。会社が自ら名簿書換のない譲受人を株主として遇することは、対抗要件の趣旨に反するものではなく自由である。したがって、Dの1500株を決議成立の有効株式数の中に計上した判断は正当である。なお、会社側が株主として認めている以上、Dに対する招集通知の欠缺があったとしても、それは決議の効力に影響を及ぼすものではない。
結論
株主名簿の書換がない譲受人を会社が株主として扱うことは適法であり、当該株式を含めてなされた総会決議は有効である。
実務上の射程
会社側からの「名簿書換失念株主(名義書換未了株主)」の承認を認めた重要判例である。答案上は、名簿の対抗力は会社の利益のためのものであるから、会社側がその利益を放棄して譲受人を株主と認めることは差し支えないという論理(会社による承認)として活用する。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
事件番号: 昭和43(オ)565 / 裁判年月日: 昭和44年1月31日 / 結論: 棄却
見せ金による株式の払込をしたにすぎない株主であつても、原告として、株主総会決議無効確認の訴を提起することができる。
事件番号: 昭和30(オ)426 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
株券発行前になされた記名株式の譲渡は、会社成立後通常株券を発行し得る合理的期間の経過後になされ、会社においてその譲渡を承認した場合であつても、会社に対しその効力を生じない。
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…