株券発行前になされた記名株式の譲渡は、会社成立後通常株券を発行し得る合理的期間の経過後になされ、会社においてその譲渡を承認した場合であつても、会社に対しその効力を生じない。
株券発行前のいわゆる合理的期間経過後における記名株式の譲渡と会社に対する効力。
商法204条2項
判旨
株券発行前の株式の譲渡は、会社に対する関係においては何らの効力を生ぜず、会社がこれを承認した場合であっても、その効力を認めることはできない。
問題の所在(論点)
株券発行前にされた株式譲渡の制限(会社に対する効力否定)について、会社側が任意にこれを承認することによって、会社に対する関係で有効と認められる余地があるか。
規範
株券発行前にした株式の譲渡は会社に対しその効力を生じない(旧商法204条2項、現会社法128条1項)。この規定の趣旨は、譲渡方式が一定しないことによる法律関係の不安定を除去し、会社株主間の権利関係を明確かつ画一的に処理することで法的安定性を確保することにある。したがって、この効力否定は絶対的なものであり、会社側からその効力を承認することも許されない。
重要事実
会社成立後、株券を発行し得る合理的期間を経過したにもかかわらず、株券が未発行の状態であった。この間に行われた株式の譲渡について、譲受人が会社に対し、会社が譲渡を承認した以上は会社に対する関係でも効力を生ずると主張して、株主としての地位(効力)を争った事案。
事件番号: 昭和39(オ)883 / 裁判年月日: 昭和47年11月8日 / 結論: その他
株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
あてはめ
旧商法204条2項(現128条1項)は「対抗することができない」という表現ではなく「効力を生じない」と規定している。これは、当事者間での有効性はともかく、会社に対する関係では無効であることを意味する。合理的期間の経過や会社の承認という主観的・個別的事由によって効力を認めるとすれば、権利関係の画一的処理という法の趣旨を害し、法律関係の混乱を招く。株券発行の遅延に対しては、株主は株券発行請求や損害賠償請求によって救済されるべきであり、譲渡の効力を例外的に認める根拠とはならない。
結論
株券発行前の株式譲渡は、会社が承認したとしても会社に対する関係で効力を生じない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
会社法128条1項(旧商法204条2項)の解釈に関するリーディングケースである。原則として「絶対的無効(会社側からの承認も不可)」であることを明示する際に使用する。ただし、後に最高裁昭和47年11月8日判決により、会社成立後または新株発行の払込期日後6ヶ月を経過した後は、株券未発行のままでも会社に対して有効に譲渡できる(現会社法128条1項ただし書)という例外が認められ、これが現行法に反映されている点に注意が必要である。したがって、本判例の射程は「6ヶ月経過前」の事案に限定して論じる必要がある。
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…
事件番号: 昭和39(オ)752 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
株券発行前になされた株式の譲渡は、会社設立後、通常、株券を発行しうる合理的期間経過後になされた場合であつても、会社に対してその効力を生じない。