昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。
清算中の会社における株式譲渡制限に関する定款の規定の効力。
商法(昭和25年法律167号による改正前)204条1項但書
判旨
清算中の会社においては、株式譲渡制限を定めた定款規定はその効力を停止し、株式譲渡は自由となる。また、清算結了の登記後であっても、株式の名義書替という現務が残存する限り、清算会社は存続し当事者能力を失わない。
問題の所在(論点)
1. 清算結了登記後の会社に当事者能力が認められるか(清算結了の意義)。 2. 清算中の会社において、定款による株式譲渡制限規定の効力は維持されるか。
規範
1. 株式譲渡制限を認める旧商法204条1項但書の趣旨は、営業継続中の会社において不当な者の介入による経営の不安定化を防止することにある。したがって、営業の存続を前提としない清算手続中においては、当該制限の必要性がなくなり、株式譲渡自由の原則に戻るため、定款の譲渡制限規定は効力が停止される。 2. 清算結了の登記がなされた後であっても、名義書替等の結了を要する現務が存続する場合には、当該会社は清算の目的の範囲内において依然として存続し、当事者能力を有する。
重要事実
上告会社(旧法下の特別経理会社)は解散し、清算手続に入っていた。会社の定款には、取締役会の承諾を要する旨の株式譲渡制限規定が存在した。被上告人は、清算中の上告会社の株式を譲り受け、白紙委任状を添付して名義書替を請求したが、会社側は清算結了の登記が完了していることや、定款の譲渡制限、名義書替手続の不備等を理由に、株主としての地位や当事者能力を争った。
事件番号: 平成1(オ)1006 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: 棄却
一 代表取締役が取締役と認めていない者は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律二四条一項にいう取締役に当たらない。 二 いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は、定款所定の取締役会の承認がなくても、会社に対する関係においても有効である。
あてはめ
1. 本件では、株式譲渡に伴う名義書替請求が未了のまま残っており、これは「現務」に該当する。したがって、清算結了登記後であっても現務が終了していない以上、会社は存続し、当事者能力を失わない。 2. 株式譲渡制限規定は、会社の営業継続に伴う経営安定を目的とするものである。本件会社はすでに解散し清算手続に入っているため、もはや営業の継続を前提とした経営安定の必要はない。よって、定款12条の譲渡制限規定の効力は停止しており、被上告人による株式取得に取締役会の承諾は不要である。 3. 名義書替請求についても、受任者欄が白紙であっても会社側にとって請求者が明らかであれば、適法な請求として認められる。
結論
清算結了登記後も現務がある限り会社は存続し、また、清算手続中は定款の譲渡制限規定の効力が停止されるため、被上告人は有効に株主の地位を取得する。上告棄却。
実務上の射程
清算会社の法人格消滅時期(実質的清算の完了)を判断する基準として重要である。また、譲渡制限株式であっても、解散・清算局面では会社側の「人的構成の維持」という利益が後退し、株主の「投下資本回収(換価)」の要請が優先されるという法理を示す。答案上は、清算手続と株式譲渡制限の目的の不整合を論理の柱とする。
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…
事件番号: 昭和30(オ)426 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
株券発行前になされた記名株式の譲渡は、会社成立後通常株券を発行し得る合理的期間の経過後になされ、会社においてその譲渡を承認した場合であつても、会社に対しその効力を生じない。
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
事件番号: 昭和31(オ)396 / 裁判年月日: 昭和33年10月3日 / 結論: 棄却
株主九名、株式総数五、〇〇〇株の株式会社において、株主の一名である代表取締役が、単に、自己の実子である二名の株主に口頭で株主総会招集の通知をしただけで、他の六名の株主(その持株二、一〇〇株)には招集の通知を全然なさず、右親子三名だけが株式総会としての決議をしても、これにより株主総会が成立しその決議があつたものということ…