株主九名、株式総数五、〇〇〇株の株式会社において、株主の一名である代表取締役が、単に、自己の実子である二名の株主に口頭で株主総会招集の通知をしただけで、他の六名の株主(その持株二、一〇〇株)には招集の通知を全然なさず、右親子三名だけが株式総会としての決議をしても、これにより株主総会が成立しその決議があつたものということはできない。
株主総会の決議が不存在と認められた事例。
商法232条,商法252条
判旨
全株主の過半数にあたる株主らに対し招集通知を欠き、実質的に代表取締役とその親族のみで行われた株主総会決議は、手続上の瑕疵が極めて重大であるため、決議が不存在であると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
多数の株主に対して招集通知を欠いたまま行われた株主総会決議について、その瑕疵が決議取消事由に該当するにとどまるのか、あるいは決議不存在事由に該当するのかが争点となった。
規範
株主総会の招集手続に瑕疵がある場合、それが単なる取消事由(会社法831条1項1号)にとどまらず、総会開催の実態を欠くほどに重大な瑕疵である場合には、株主総会決議の不存在(同法830条1項)にあたる。具体的には、多数の株主に対して招集通知が全くなされず、特定の少数の者のみによって恣意的に行われた決議は、法律上の株主総会として成立したものとは認められない。
重要事実
上告会社(被告)の総株主は9名(総株式数5,000株)であったが、そのうち被上告人らを含む6名(持株計2,100株)に対しては、株主総会の招集通知が全く行われなかった。通知を受けた可能性のある他の株主についても、代表取締役の実子である2名に対して口頭でなされたに過ぎない。結局、本件決議は、代表取締役とその親族である計3名のみによって、法律所定の手続を無視して行われたものであった。
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
あてはめ
本件では、全株主9名中6名という過半数を超える株主に対し、招集通知が一切なされていない。また、実際に決議に関与した者は代表取締役とその実子2名の計3名に限定されており、本来の株主構成からみて総会開催の実態を著しく欠いている。このような構成員の一部のみによる独断的な手続は、単なる手続の軽微な違反ではなく、もはや法律上の株主総会が開催され、決議が行われたと評価できる段階に達していないといえる。
結論
本件株主総会決議は、なんら法律所定の手続によらず単に親族3名によってなされたものであり、株主総会が成立したとはいえないため、決議は不存在である。
実務上の射程
招集通知の漏れが一部の株主にとどまる場合は決議取消事由となるのが原則であるが、本判決のように通知漏れが多数に及び、特定の者のみで閉鎖的に行われた場合には、決議不存在の訴えの対象となる。答案上は、瑕疵の程度が「総会の開催自体がなかった」と同視できるほどに重大か否かを、通知漏れの人数割合や決議主体の属性(親族のみ等)から論証する際に用いる。
事件番号: 昭和44(オ)276 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄自判
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。
事件番号: 昭和43(オ)826 / 裁判年月日: 昭和46年6月24日 / 結論: 棄却
いわゆる一人会社においては、その一人の株主が出席すれば、招集の手続がなくても、株主総会は成立する。
事件番号: 昭和42(オ)867 / 裁判年月日: 昭和45年1月22日 / 結論: その他
一、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の控訴審判決があつた場合においては、控訴人は、取消の理由となつた右判決の判断の違法をいうときにかぎり、右判決に対して上告の利益を有する。 二、定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している株式会社において、株主名簿上の株主でない甲に乙名義株式の議決権…
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。