いわゆる一人会社においては、その一人の株主が出席すれば、招集の手続がなくても、株主総会は成立する。
いわゆる一人会社と株主総会の成立
商法231条,商法232条,商法239条1項
判旨
いわゆる一人会社において、唯一の株主が出席して株主総会を開催した場合には、株主総会の招集手続を欠いていても、その総会は有効に成立する。
問題の所在(論点)
株主が一人しか存在しない一人会社において、会社法(旧商法)が定める株主総会の招集手続を欠いたまま開催された株主総会の決議は、有効といえるか。
規範
一人会社(実質的に一人の株主が全株式を保有する会社)においては、その唯一の株主が出席すれば株主総会は成立し、法律上の招集手続を経る必要はない。
重要事実
上告人は、被上告会社の設立時の株主らから株式の譲渡処分権限を付与され、株券の保管を託されていた。上告人はこの授権に基づき、昭和34年2月、全株式を訴外D石油株式会社に譲渡することを約諾し、株券を交付した。その後、D石油は神戸出張所長であった訴外E名義に名義書換手続を了した。これにより、Eが一人で株主となった状態(一人会社)で株主総会が開催された。
あてはめ
事件番号: 昭和44(オ)276 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄自判
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。
本件では、株式の譲渡および名義書換により、訴外Eが唯一の株主となっている。招集手続は株主に対して出席の機会を保障するためのものであるが、一人会社においては、唯一の株主が出席して意思決定を行うことで、株主総会の実質的な要件を満たしている。したがって、Eが出席して開催された本件総会において、別途形式的な招集手続を履践していなかったとしても、手続上の瑕疵は成立を妨げるものではない。
結論
唯一の株主が出席すれば株主総会は成立し、招集手続を要しないため、本件株主総会は有効である。
実務上の射程
本判決は一人会社における招集手続の省略を認めたものである。現在の実務・答案作成においても、全株主が出席し、または書面決議等が行われる場合と同様の理屈として、手続的瑕疵の不存在や取消事由の否定(特段の事情がない限り、決議取消事由とならない)の論拠として活用できる。特に実質的一人会社での取締役の解任や重要事項の決定の効力が争われる場面で射程が及ぶ。
事件番号: 平成1(オ)1006 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: 棄却
一 代表取締役が取締役と認めていない者は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律二四条一項にいう取締役に当たらない。 二 いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は、定款所定の取締役会の承認がなくても、会社に対する関係においても有効である。
事件番号: 昭和42(オ)867 / 裁判年月日: 昭和45年1月22日 / 結論: その他
一、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の控訴審判決があつた場合においては、控訴人は、取消の理由となつた右判決の判断の違法をいうときにかぎり、右判決に対して上告の利益を有する。 二、定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している株式会社において、株主名簿上の株主でない甲に乙名義株式の議決権…
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…
事件番号: 昭和31(オ)396 / 裁判年月日: 昭和33年10月3日 / 結論: 棄却
株主九名、株式総数五、〇〇〇株の株式会社において、株主の一名である代表取締役が、単に、自己の実子である二名の株主に口頭で株主総会招集の通知をしただけで、他の六名の株主(その持株二、一〇〇株)には招集の通知を全然なさず、右親子三名だけが株式総会としての決議をしても、これにより株主総会が成立しその決議があつたものということ…