一 代表取締役が取締役と認めていない者は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律二四条一項にいう取締役に当たらない。 二 いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は、定款所定の取締役会の承認がなくても、会社に対する関係においても有効である。
一 代表取締役が取締役と認めていない者と株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律二四条一項にいう取締役 二 いわゆる一人会社の株主が定款所定の取締役会の承認を得ないでした株式譲渡の効力
株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律24条,商法204条1項
判旨
一人会社の株主が保有株式を譲渡した場合には、定款に譲渡制限の定めがあり、取締役会の承認を欠いていても、その譲渡は会社に対する関係で有効である。また、代表取締役が相手方の取締役としての地位を否定している場合、会社・取締役間の訴訟における特別代表に関する規定(現・会社法364条等)は適用されない。
問題の所在(論点)
1. 譲渡制限株式において、一人株主が取締役会の承認を得ずに株式を譲渡した場合、会社に対してその効力を主張できるか。 2. 会社・取締役間の訴訟において、代表取締役が相手方の取締役の地位を否定している場合でも、特別代表の定めの適用を受けるか。
規範
1. 株式譲渡制限の趣旨(会社法107条1項1号等)は、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、既存株主の利益を保護することにある。したがって、株主が一人である場合、その株主自身が譲渡を行えば保護すべき他株主が存在しないため、取締役会の承認を欠いても、譲渡は会社に対する関係で有効となる。 2. 会社と取締役間の訴訟における代表権の制限規定は、代表取締役が同僚の取締役の利益を優先させる「なれ合い訴訟」を防止する趣旨である。よって、代表取締役が相手方の取締役としての地位を争っている場合はなれ合いのおそれがないため、同規定の適用はない。
重要事実
事件番号: 昭和43(オ)826 / 裁判年月日: 昭和46年6月24日 / 結論: 棄却
いわゆる一人会社においては、その一人の株主が出席すれば、招集の手続がなくても、株主総会は成立する。
資本金1000万円の株式会社(上告人)の全株式2万株を保有する唯一の株主かつ代表取締役であったDが、うち1万5000株をB1およびB3に譲渡した。この譲渡に際し、上告人の定款には取締役会の承認が必要との定めがあったが、承認手続は行われなかった。その後、B1らが自己の取締役としての地位確認等を求めて出訴したところ、Dが会社を代表して「B1らは取締役ではない」と主張して争った。上告人は、B1らが取締役であることを前提に、本件訴訟には商法特例法(現・会社法364条相当)に基づく特別代表の選任が必要であり、Dによる応訴は無効であると主張した。
あてはめ
1. 本件会社はDが全株式を保有するいわゆる一人会社である。D自らが株式を譲渡している以上、譲渡人以外の株主の利益を保護する必要性は皆無である。したがって、定款所定の承認手続を欠いていても、B1らへの株式譲渡は会社に対する関係で有効である(評価:保護法益の不在による制限の解除)。 2. 応訴した代表取締役Dは、相手方であるB1らが取締役であることを真っ向から争っている。この場合、DがB1らの利益を優先させて「なれ合い」を図る危険性は客観的に認められない。したがって、B1らは同規定にいう「取締役」に当たらない(評価:趣旨の不妥当による適用除外)。
結論
1. 譲渡は会社に対しても有効であり、B1らは株主としての地位を取得する。 2. 本件訴訟において代表取締役Dの代表権は制限されず、その応訴手続は有効である。
実務上の射程
一人会社における譲渡制限違反の効力を肯定したリーディングケース。答案上は、譲渡制限の趣旨(会社にとって好ましくない者の参入防止)から論じ、一人会社や全株主の合意がある場合には「保護すべき利益がない」として例外的に有効とする構成で用いる。会社法364条等の訴訟代表についても、形式的判断ではなく「なれ合いの防止」という趣旨から適用の是非を判断する枠組みとして有用である。
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
事件番号: 平成6(オ)7 / 裁判年月日: 平成9年3月27日 / 結論: 棄却
有限会社の社員がその持分を社員でない者に対して譲渡した場合において、右譲渡人以外の社員全員がこれを承認していたときは、右譲渡は、社員総会の承認がなくても、譲渡当事者以外の者に対する関係においても有効である。
事件番号: 昭和42(オ)867 / 裁判年月日: 昭和45年1月22日 / 結論: その他
一、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の控訴審判決があつた場合においては、控訴人は、取消の理由となつた右判決の判断の違法をいうときにかぎり、右判決に対して上告の利益を有する。 二、定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している株式会社において、株主名簿上の株主でない甲に乙名義株式の議決権…