取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。
取締役会の決議を経ることなく代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会の決議の効力
商法251条,商法261条
判旨
取締役会の決議を経ず、かつ招集権限のない取締役によって招集された株主総会は、法律上の意義における株主総会とはいえず、そこでなされた決議は不存在(または無効)である。
問題の所在(論点)
代表取締役以外の取締役が、取締役会の決議を経ることなく専断で招集した株主総会においてなされた決議の効力が、決議不存在事由(会社法830条1項)にあたるか否か。
規範
株主総会の招集は、原則として代表取締役が取締役会の決議に基づいて行うべきものである。そのため、招集権限のない者によって取締役会の決議を経ることなく招集された株主総会は、適法な招集手続を欠くのみならず、法律上の意義における株主総会と評価することはできない。したがって、かかる手続によりなされた決議は、株主総会の決議として成立したものとは認められない。
重要事実
同族会社である被上告会社において、代表取締役Dが死亡したため、取締役であったEが後任人事決定のために臨時株主総会を招集した。しかし、Eは代表取締役ではなく、かつ当該招集にあたって取締役会の決議を経ることなく、自身の専断によって電話や口頭で株主らに対し招集通知を行った。同総会ではE、H、Aを新取締役とする等の決議がなされたが、株主の一部(G)には通知がなされていなかった。
事件番号: 昭和43(オ)826 / 裁判年月日: 昭和46年6月24日 / 結論: 棄却
いわゆる一人会社においては、その一人の株主が出席すれば、招集の手続がなくても、株主総会は成立する。
あてはめ
本件臨時総会は、取締役の一人にすぎないEが招集したものであり、招集権限のない者による招集であるといえる。また、認定事実によれば、当該招集に際して取締役会の決議が経られた形跡はなく、Eの専断によってなされたものと推認される。このように、法が定める正当な招集権限者および意思決定手続を完全に欠いた状態で開催された集会は、もはや法律上の株主総会としての実体を備えていない。よって、当該総会でなされた決議は有効に成立したとは解されない。
結論
招集権限のない者によって取締役会の決議なく招集された株主総会の決議は、法律上の株主総会決議とは認められず、不存在(本判決当時は無効)である。
実務上の射程
会社法830条1項の「決議不存在」の典型例(招集権限者以外による招集)として重要である。実務上、取締役会設置会社においては、取締役会の招集決定(298条4項)を欠く招集権限者による招集は決議取消事由にとどまるが、本判例のように「招集権限」そのものを欠く者による招集は、特段の事情がない限り不存在事由となる点に注意して起案する必要がある。
事件番号: 昭和42(オ)867 / 裁判年月日: 昭和45年1月22日 / 結論: その他
一、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の控訴審判決があつた場合においては、控訴人は、取消の理由となつた右判決の判断の違法をいうときにかぎり、右判決に対して上告の利益を有する。 二、定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している株式会社において、株主名簿上の株主でない甲に乙名義株式の議決権…
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…
事件番号: 昭和31(オ)396 / 裁判年月日: 昭和33年10月3日 / 結論: 棄却
株主九名、株式総数五、〇〇〇株の株式会社において、株主の一名である代表取締役が、単に、自己の実子である二名の株主に口頭で株主総会招集の通知をしただけで、他の六名の株主(その持株二、一〇〇株)には招集の通知を全然なさず、右親子三名だけが株式総会としての決議をしても、これにより株主総会が成立しその決議があつたものということ…