一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、ただちにその株主が商法第二三九条第五項のいわゆる特別利害関係人にあたるとはいえない。
一 株主総会の決議の成立と採決手続を経ることの要否 二 営業を譲渡する会社の株主が譲受会社の代表取締役である場合と営業譲渡の議案についてのいわゆる特別利害関係人
商法239条1項,商法239条5項,商法245条1項1号
判旨
株主総会において、議事の最終段階で各株主の確定的な賛否が判明し、決議に必要な議決権数に達したことが明白になった以上、改めて挙手・採決等の手続を経なくても決議は成立する。また、営業譲渡の譲受会社の代表取締役である株主は、直ちに特別利害関係を有する者(旧商法239条5項)には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 形式的な採決手続を欠く場合に株主総会決議が成立するか。 2. 営業譲受会社の代表取締役である株主は、営業譲渡決議における「特別の利害関係を有する者」に当たるか。
規範
1. 株主総会の議事方式に特例や定款の定めがない限り、討議の過程を経て、最終段階で各株主の確定的な賛否が明らかとなり、必要数に達したことが明白になれば、改めて挙手・起立・投票等の採決手続を経ずとも表決は成立する。 2. 営業譲渡決議において、譲受会社の代表取締役を兼ねる株主であっても、その事実のみで直ちに決議について特別の利害関係を有する者とは解されない。
重要事実
被上告会社において営業譲渡を目的とする株主総会が開催された。議長が挙手や起立といった形式的な採決手続を行わなかったが、最終段階で出席株主全員に分かる形で、反対派3名を除く株主7名が賛成していることが明白となった。また、賛成株主の1人は譲受会社の代表取締役を兼ねていた。さらに、一部の株主に対しては書面ではなく口頭で招集通知がなされていた。これらにつき、決議の不存在や取消事由が争われた。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
あてはめ
1. 本件総会では、討議の最終段階において出席株主全員の知るところとして、株主10名中7名の賛成が確定的に明らかになっていた。この場合、挙手等の形式的採決がなくても、必要議決権数に達したことが明白であるため、表決が成立したといえる。 2. 株主が譲受会社の代表取締役であるという関係は、譲渡の当事者そのものではなく、その地位のみから直ちに決議の結果に不当な利益を得るような特別の利害関係があるとは認められない。
結論
1. 形式的な採決手続を欠いても決議は成立し、決議不存在とはいえない。 2. 譲受会社の代表取締役である株主は特別利害関係人に当たらず、同人が加わった決議は有効である。
実務上の射程
小規模な閉鎖会社における略式的な議事運営の有効性を肯定する射程を持つ。答案上は、決議不存在(会社法830条1項)の成否において、形式的瑕疵が「決議があったと評価できないほど重大」か否かを判断する際の基準として用いる。また、特別利害関係人の判断(831条1項3号)では、単なる役員兼任等の人的関係だけでは足りず、個別の利益衝突状況を具体的に検討すべきことを示唆する。
事件番号: 昭和43(オ)826 / 裁判年月日: 昭和46年6月24日 / 結論: 棄却
いわゆる一人会社においては、その一人の株主が出席すれば、招集の手続がなくても、株主総会は成立する。
事件番号: 昭和44(オ)276 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄自判
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。
事件番号: 昭和39(オ)711 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
株主総会の議事録は、総会に関する事実の記録であり、証拠文書として作成を要求されているが、これを作成しなくても決議の効力には影響なく、その記載の不備により議事録自体の効力を左右するものではない。
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。