株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
株式会社が株券の発行を遅滞している場合における意思表示のみによる株式譲渡の効力
商法204条,商法205条1項,商法226条1項,商法247条,商法260条ノ2,民訴法225条
判旨
会社が株券の発行を不当に遅滞している場合には、信義則上、株券発行前の株式譲渡の効力を否定することはできず、会社は譲受人を株主として扱わなければならない。
問題の所在(論点)
株券発行前になされた株式の譲渡について、会社が株券発行を不当に遅滞している場合、会社は会社法128条2項(旧商法204条2項)に基づきその効力を否定できるか。
規範
会社法128条2項(旧商法204条2項)が株券発行前の株式譲渡の効力を会社に対して否定する趣旨は、会社が株券を遅滞なく発行することを前提に、その発行事務の円滑と正確を期す点にある。したがって、会社が不当に株券発行を遅滞し、信義則に照らして株式譲渡の効力を否定することが相当でない状況にあるときは、株主は意思表示のみで有効に株式を譲渡でき、会社はその効力を否定できない。
重要事実
被上告会社は株式会社への組織変更後、4年以上の長きにわたり株券を発行せず放置していた。その間、株主B1は上告人に対し、所有する16,000株を意思表示のみで譲渡。会社はこの譲渡を承認して株主台帳に記載し、後にこの株式について上告人を原始株主とする株券を交付した。しかし、B1は後に自らを株主として株主総会を招集・開催し、役員解任等の決議を行った。原審は、株券発行前の譲渡は会社に対し無効であり、B1が依然として株主であるとして当該決議を有効と判断した。
事件番号: 昭和42(オ)1293 / 裁判年月日: 昭和43年10月17日 / 結論: 破棄差戻
株主総会決議無効確認の訴において、原告が自己の株主であることを立証するために同人名義の株券を書証として提出した場合であつても、その提出が二審においてはじめてされたものであるうえ、右株券には同人名義の白地式裏書があり、同人がこれを他に譲渡して一審当時はこれを所持していなかつたことを窺わせる判示の如き証拠があるときには、こ…
あてはめ
本件会社は組織変更後4年余り株券を発行しておらず、不当な株券発行遅滞があることは明らかである。また、会社自身が譲渡を承認して株主台帳に記載し、後に株券を交付している事実に鑑みれば、信義則上、会社は譲渡の無効を主張できない。したがって、譲受人である上告人は株主としての権利を行使する資格を有し、逆に譲渡人B1は議決権を有しない。B1の持ち株を計算に含めてなされた本件各決議は、定足数を欠く瑕疵があるといえる。
結論
会社が株券発行を不当に遅滞している場合、意思表示による株式譲渡は会社に対しても有効である。よって、非株主である譲渡人の議決権行使に基づく本件株主総会決議は取り消されるべきであり、それに基づく取締役会決議等も無効となる。
実務上の射程
株券発行会社における株券発行前譲渡の原則(会社に対する相対的無効)の例外を画した重要判例である。不当な発行遅滞がある場合のほか、会社側が譲渡を認めていた等の信義則上の要素が重なる場合に、会社側からの無効主張を封じる理論として答案で活用する。
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…
事件番号: 昭和30(オ)426 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
株券発行前になされた記名株式の譲渡は、会社成立後通常株券を発行し得る合理的期間の経過後になされ、会社においてその譲渡を承認した場合であつても、会社に対しその効力を生じない。
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。
事件番号: 昭和43(オ)565 / 裁判年月日: 昭和44年1月31日 / 結論: 棄却
見せ金による株式の払込をしたにすぎない株主であつても、原告として、株主総会決議無効確認の訴を提起することができる。