株主総会決議無効確認の訴において、原告が自己の株主であることを立証するために同人名義の株券を書証として提出した場合であつても、その提出が二審においてはじめてされたものであるうえ、右株券には同人名義の白地式裏書があり、同人がこれを他に譲渡して一審当時はこれを所持していなかつたことを窺わせる判示の如き証拠があるときには、これらの証拠について何ら説示することなく、また株主名簿の記載についても何ら審理判断せずして、単に同人が右株券を所持することのみから、同人を株主であると認定したことには、審理不尽・理由不備の違法がある。
株券の占有のみからその占有者を株主と認定したことに違法があるとされた事例
商法205条2項,商法206条1項
判旨
譲渡裏書のある株券を所持しているという事実のみから直ちに株主たる地位を認定することはできず、過去の譲渡事実や名義書換の有無を審理せずに株主権を認める判断には、審理不尽・理由不備の違法がある。
問題の所在(論点)
裏面に譲渡裏書がある株券を所持しているという事実のみをもって、特段の審理を行うことなく直ちに株主であると認定できるか。また、株式の再取得が主張される場合に名義書換の有無を審理すべきか。
規範
株券の所持は株主であることを推認させる一資料にはなり得るが、その裏面に譲渡裏書がなされ、かつ過去に当該株券を他者が所持していた事実がある場合には、単なる所持のみをもって株主と認定することはできない。株式を取得して会社に対抗するためには、取得者の氏名および住所を株主名簿に記載(名義書換)することが必要であり(商法206条1項、現会社法130条1項)、裁判所はこれら対抗要件の具備や取得の経緯についても審理判断すべきである。
重要事実
被上告人(原告)は、上告会社に対して株主権の確認等を求めた。一審において被上告人は、株券は会社代表者Eが所持していると述べ、自ら所持していないことを前提に文書提出命令の申立てを行っていた。また、提出された乙号証には被上告人が株式を譲渡したことを推認させる記載があった。しかし、原審(二審)において被上告人が自分名義の株券を提出したところ、原審はその裏面に譲渡裏書があるにもかかわらず、その株券の所持のみを根拠として、他の証拠を十分に検討せず被上告人の株主権を認定した。
事件番号: 昭和39(オ)883 / 裁判年月日: 昭和47年11月8日 / 結論: その他
株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
あてはめ
本件では、被上告人が一審において株券を所持していないことを自認し、さらに提出された株券の裏面には被上告人による譲渡裏書がなされていた。これらの事実は、被上告人が一度株式を裏書譲渡して株主ではなくなったことを強く窺わせるものである。それにもかかわらず、原審はこれらの証拠を排斥せず、また、被上告人がその後あらためて株式を取得した事実や、会社に対する対抗要件(株主名簿の記載)を具備したか否かについて一切の審理を行っていない。したがって、株券の呈示のみから漫然と株主と認定した原審の判断には、論理的な不備がある。
結論
原審の判断には審理不尽、理由不備の違法がある。したがって、原判決を破棄し、株主権の有無を再審理させるため本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
記名株券の所持による権利推定力と、譲渡裏書や名義書換制度の関係を示す事案である。答案上では、会社法上の株主認定において、株券の占有だけでなく裏書の有無や名義書換の事実といった対抗要件の充足性が、事実認定の重要な指標となることを指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。
事件番号: 昭和42(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和47年2月3日 / 結論: 棄却
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。 二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職…
事件番号: 昭和28(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株主総会決議に参加した特定の株主の株式取得原因が公序良俗に反し無効であるとしても、それは決議方法の違法に留まり、決議内容の違法には該当しない。 第1 事案の概要:上告人らは、本件株主総会の決議形成過程において、特定の株主が株式を取得した原因が犯罪に関連し、民法90条(公序良俗)に反して無効であると…
事件番号: 昭和42(オ)1319 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
取締役・監査役の選任決議を内容とする株主総会決議の不存在確認の訴は、右取締役・監査役が退任した後においては、現在の法律関係ではなく即時確定の利益を欠くものである。