一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。 二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職務代行者も、これをすることができる。
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することが許されるか 二、株式名義書換請求につき許否を決する行為と商法二七一条にいう「会社ノ常務」
商法270条,商法271条,商法254条
判旨
取締役の職務執行停止等の仮処分中でも、株主総会が後任者(同一人を含む)を選任することは妨げられず、また代表取締役職務代行者は株式名義書換請求の審査・決定を行う権限を有する。
問題の所在(論点)
1. 取締役の職務執行停止の仮処分期間中に、株主総会が後任(または同一人)を再度取締役として選任する決議の効力。2. 株式の名義書換請求の審査・決定が、職務代行者の権限に属する「会社の常務」に該当するか。
規範
1. 役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分の効力が存続していても、株主総会はその拘束を受けず、当該役員の辞任に伴う後任者の選任(職務停止中の者と同一人の再選を含む)を行うことができる。2. 職務代行者の権限である「会社の常務」(会社法352条1項)には、株式名義書換請求の要件審査およびその許否の決定が含まれる。
重要事実
会社に対し、商法270条(現会社法352条等)に基づく取締役の職務執行停止および職務代行者選任の仮処分がなされていた。この仮処分の存続中に、執行を停止された取締役が辞任し、株主総会において当該取締役を含む後任者の選任決議が行われた。また、選任された職務代行者が、株式の名義書換請求に対する審査および承認行為を行った。上告人は、これらの決議の有効性および職務代行者の権限外行為を主張して争った。
あてはめ
1. 仮処分の目的は、係争中の取締役による職務執行を一時的に差し止める点にあるが、株主総会による選任権限までを奪うものではない。したがって、同一人を再選したとしても決議は無効とはならない。2. 株式の名義書換は、株主名簿の記載を実態に合わせる定型的・事務的な手続であり、会社の組織的基盤を根本的に変更するような行為ではない。ゆえに、適法な要件を具備するかを審査し受理することは、代表取締役職務代行者が行い得る「会社の常務」に属すると評価される。
結論
1. 職務停止中の取締役を再度選任する株主総会決議は有効である。2. 職務代行者による名義書換の審査・決定は「会社の常務」に含まれ、適法である。
実務上の射程
仮処分による職務執行停止は、あくまで「その地位に基づく職務」を止めるものであり、株主総会の選任権や会社の日常的事務処理(常務)までを広範に制約するものではないことを明示した。答案上では、職務代行者の権限範囲(常務)の具体例として名義書換を挙げる際や、仮処分の対世的効力の限界を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1293 / 裁判年月日: 昭和43年10月17日 / 結論: 破棄差戻
株主総会決議無効確認の訴において、原告が自己の株主であることを立証するために同人名義の株券を書証として提出した場合であつても、その提出が二審においてはじめてされたものであるうえ、右株券には同人名義の白地式裏書があり、同人がこれを他に譲渡して一審当時はこれを所持していなかつたことを窺わせる判示の如き証拠があるときには、こ…
事件番号: 昭和57(オ)1419 / 裁判年月日: 昭和59年9月28日 / 結論: 棄却
株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。
事件番号: 昭和40(オ)1206 / 裁判年月日: 昭和43年11月1日 / 結論: 棄却
一、商法第一二条は、当事者である株式会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。 二、議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限する旨の定款の規定は、有効である。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。