一 有限会社の代表取締役職務代行者が臨時社員総会を招集した場合でも、該総会における決議は、当然無効と解すべきではなく、商法第二四七条所定の決議取消の訴によつて取り消しうるにすぎないものと解すべきである。 二 仮処分により代表取締役の職務の執行を停止された者が代表者としてなした行為は、無効であつて、後に仮処分が取り消されても、遡つて有効となるものではない。
一 代表取締役職務代行者が招集した臨時社員総会における決議の効力 二 職務執行停止仮処分の効力。
商法270条,商法271条,商法247条,商法252条,有限会社法32条,有限会社法41条
判旨
代表取締役職務代行者が会社の常務に属しない行為として臨時株主総会を招集した場合、その招集手続の瑕疵は株主総会決議取消事由にとどまり、決議が当然に無効となるものではない。
問題の所在(論点)
代表取締役職務代行者が、裁判所の許可を得ずに会社の常務に属しない行為として臨時株主総会を招集した場合、その総会における決議の効力はどうなるか。また、その代表者の訴訟追行権に影響するか。
規範
代表取締役職務代行者は、裁判所の許可がない限り会社の常務に属しない行為をすることが禁じられる(会社法352条1項参照)。職務代行者がこの定めに反して臨時株主総会を招集したとしても、その招集手続の瑕疵は株主総会決議の取消事由(同法831条1項1号)に該当するにとどまり、決議を当然に無効(不存在)とする事由にはならない。
重要事実
被上告会社において、仮処分により選任された代表取締役職務代行者が臨時株主総会を招集した。当該総会においてDが取締役に選任され、さらに代表取締役に選任された。上告人は、職務代行者による総会招集は「常務に属しない行為」であり、その招集に基づく決議は当然無効であるから、Dには代表権がなく、Dが遂行した本件訴訟手続には無権代理の違法があると主張した。
事件番号: 昭和42(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和47年2月3日 / 結論: 棄却
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。 二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職…
あてはめ
職務代行者による臨時株主総会の招集は「常務に属しない行為」に該当する。しかし、この招集手続の法令違反は、決議取消の訴えによってのみ争いうる瑕疵である。本件においては、法定の期間内に決議取消の訴えが提起された事実は認められない。したがって、期間の経過により当該決議は有効に確定しているといえる。その結果、同総会で選任されたDは適法な代表者であり、その訴訟追行に違法はない。
結論
職務代行者が常務外の行為として総会を招集しても、決議取消の訴えが提起されない限り決議は有効であり、そこで選任された代表者の訴訟追行は適法である。
実務上の射程
職務代行者の権限逸脱行為が決議の効力に与える影響を限定した判例である。答案上では、招集権限のない者による招集(招集手続の法令違反)であっても、それが直ちに決議不存在や無効をもたらすのではなく、特段の事情がない限り取消事由にとどまると論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和50(オ)157 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
取締役の解任を目的とする臨時総会の招集は、少数株主による招集請求に基づくときでも、商法二七一条一項にいう会社の常務に属さない。
事件番号: 昭和35(オ)1120 / 裁判年月日: 昭和37年8月30日 / 結論: 棄却
株式会社の一部株主の代理人による決議権の行使が定款に違反したこと、他の一部株主に対する株主総会招集通知が欠缺したことの違法があつても、その違法が株主総会決議の結果に異動をおよぼすと認められないときは、右決議取消の請求を棄却することができる。
事件番号: 昭和57(オ)1419 / 裁判年月日: 昭和59年9月28日 / 結論: 棄却
株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。