株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。
代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合にその本案訴訟において会社を代表すべき者
商法270条1項,商法271条1項,民訴法58条
判旨
取締役選任決議無効確認訴訟において、職務執行停止・職務代行者選任の仮処分がなされた場合、会社を代表して訴訟を追行するのは、職務を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。
問題の所在(論点)
取締役選任決議無効確認訴訟において、代表取締役の職務執行停止および職務代行者選任の仮処分がなされた場合、当該本案訴訟における会社の代表者は誰か。
規範
取締役選任決議の無効確認訴訟を本案とする職務執行停止・職務代行者選任の仮処分がなされた場合、当該仮処分に別段の定めのない限り、職務を停止された代表取締役は会社代表権を含む一切の職務執行から排除される。したがって、本案訴訟において被告たる会社を代表して訴訟の追行にあたる権限を有するのは、代表取締役職務代行者である。
重要事実
上告人は、株主総会における取締役選任決議の無効確認を求めて会社を提訴した。これに伴い、当該決議により選任された代表取締役に対し、その職務執行を停止し、代表取締役職務代行者を選任する旨の仮処分命令が発令された。本案訴訟において、職務執行を停止された代表取締役がなお会社代表者として訴訟追行の権限を有するか、あるいは選任された職務代行者がその権限を有するか、訴訟追行権の帰属が争われた。
事件番号: 昭和42(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和47年2月3日 / 結論: 棄却
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。 二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職…
あてはめ
まず、選任決議無効確認訴訟はその性質上、会社のみが被告適格を有し、取締役個人は被告とはならない。代表取締役が同訴訟を追行できるのは、専ら会社の代表機関としての地位に基づくものであり、個人の権利利益に基づくものではない。本件では仮処分により代表取締役の職務執行が全面的に停止され、代行者が選任されている。この場合、代表取締役は会社代表権から排除されるため、会社を代表して訴訟を行う権限も喪失すると解される。なお、当該取締役は共同訴訟的補助参加により自身の利益を擁護する途が確保されているため、訴訟追行権を否定しても不当とはいえない。また、代表権の有無は手続上の問題であり、仮処分による判断が本案の請求の当否に影響を及ぼすものでもない。
結論
代表取締役の職務執行を停止し職務代行者を選任する仮処分がなされたときは、本案訴訟において会社を代表して訴訟の追行にあたる者は代表取締役職務代行者である。
実務上の射程
役員選任の効力が争われる場面で、代表訴訟や決議取消・無効訴訟において職務執行停止の仮処分が併用された際、被告会社の代表権が誰に帰属するかを論じる際の必須の規範である。会社側の応訴手続における適法な代表者を特定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和35(オ)1447 / 裁判年月日: 昭和39年5月21日 / 結論: 棄却
一 有限会社の代表取締役職務代行者が臨時社員総会を招集した場合でも、該総会における決議は、当然無効と解すべきではなく、商法第二四七条所定の決議取消の訴によつて取り消しうるにすぎないものと解すべきである。 二 仮処分により代表取締役の職務の執行を停止された者が代表者としてなした行為は、無効であつて、後に仮処分が取り消され…
事件番号: 昭和27(オ)4 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】役員選任決議の無効および役員の地位不存在の確認を求める訴えにおいて、対象となる役員が既に退任し、その後の役員でないことが明白である場合には、確認の利益を欠く。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会議所が昭和25年6月28日の議員総会で行った役員選任決議が無効であること、および特定の個人が副会頭の地…