一 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分に、民訴法上の仮処分に関する規定を適用することができる。 二 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分に対し、原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとで異議申立がなされた場合には、民訴法第五一二条の準用によつて、異議の裁判があるまで右仮処分の執行停止を命ずることができる。
一 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分と民訴法上の仮処分に関する規定の適用 二 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分の執行停止ができるとされた事例
商法270条,民訴法760条,民訴法744条,民訴法745条,民訴法512条
判旨
取締役の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分について、一定の例外的な場合には執行停止(民事訴訟法512条の準用)が認められる。この場合の「執行停止」とは、仮処分によって生じた権利関係の変動という「効力の停止」を意味する。
問題の所在(論点)
取締役の職務執行停止・代行者選任の仮処分において、民事訴訟法上の執行停止の規定を準用できるか。また、同仮処分における「執行停止」の意義(対象)は何か。
規範
取締役の職務執行停止等の仮処分についても、原則として執行停止は許されないが、例外的に、(1)仮処分の内容が権利保全の範囲を超えて終局的満足を得させるものである場合、または(2)執行により債務者に回復困難な損害を生じさせるおそれがある場合には、民訴法(当時)512条を準用して執行停止が許される。この「執行」とは、いわゆる強制執行ではなく、当該仮処分の「効力」そのものを指す。
重要事実
会社代表取締役Eに対し職務執行を停止し、代行者Dを選任する仮処分決定がなされた。これに対しEが仮処分異議を申し立て、同時に当該仮処分の執行停止(効力停止)を求めた。原審は、代行者Dが全権限を取得しEが職務を完全に失うことから、回復困難な損害のおそれがあるとして執行停止を認めた。その後、仮処分決定を取消す判決(仮執行宣言付)が出たが、その後にDが代表代行者として訴えの取下げを行ったため、その有効性が争われた。
事件番号: 昭和42(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和47年2月3日 / 結論: 棄却
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。 二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職…
あてはめ
本件仮処分は、効力が存続する限りEの職務執行を当然に停止し、代行者Dに全ての権限を取得させるものである。このような仮処分は、仮処分債務者Eに対し、従前の代表取締役としての地位に関して回復し難い損害を蒙らせる虞があるといえる。したがって、民訴法の準用により応急措置として効力を停止することは適法である。また、本件のような仮処分には強制的実現を伴う狭義の執行はないため、ここでの「執行の停止」は「仮処分の効力の停止」を意味すると解するのが相当である。
結論
職務執行停止等の仮処分にも執行停止の準用は認められ、その趣旨は仮処分の効力を停止することにある。本件では仮処分取消判決により代行者Dは地位を失っており、その後の訴え取下げは無効である。
実務上の射程
会社法上の仮処分であっても、手続的には民事保全法(旧民訴法)の枠組みが適用されることを確認した判例。答案上は、仮処分によって事実上の終局的満足が得られてしまう場合や回復困難な損害がある場合に、執行停止という対抗手段があることを示す際に活用する。特に「執行」を「効力」と読み替える解釈は、非給付的な仮処分の場面で重要となる。
事件番号: 昭和57(オ)1419 / 裁判年月日: 昭和59年9月28日 / 結論: 棄却
株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。
事件番号: 昭和33(オ)433 / 裁判年月日: 昭和35年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】あらかじめ内容が確定している和解手続において、一方当事者が相手方の代理人に対して和解手続のための代理権を授与することは、民法108条が禁止する双方代理の法意に反せず、有効である。 第1 事案の概要:上告人は、相手方である被上告人との間で和解条項をあらかじめ了承していた。その上で、既に内容が取り決め…