行政処分の無効を理由としても、その行政処分の効力を停止する趣旨の仮処分申請は許されない。
行政処分を無効であるとしてその効力の停止を求める趣旨の仮処分申請の適否
行政事件訴訟特例法10条
判旨
行政庁の処分については、仮にそれが無効なものであっても、形式上行政庁の処分として存在する以上、執行停止の手続によるべきであり、民事訴訟法上の仮処分の規定を適用することはできない。
問題の所在(論点)
行政庁による差押処分が無効であると主張する場合において、民事訴訟法上の仮処分を申請することが許されるか。行政事件訴訟特例法10条7項(現行法44条)の「行政庁の処分」に無効な処分も含まれるかが問題となる。
規範
行政事件訴訟特例法10条7項(現行の行政事件訴訟法44条)は、行政庁の処分について民事訴訟法上の仮処分の規定を適用しないと定めている。たとえ処分が無効であると主張する場合であっても、形式上行政庁の処分として存在する以上は、判決確定前にその効力を停止するには、法が定める執行停止の方法(同法10条2項、現行法25条等)によるべきであり、民事上の仮処分を申請することは不適法である。
重要事実
上告人は、酒税法違反の疑いで国税犯則取締法に基づき工場施設や原料等の差押処分を受けた。これに対し、上告人は差押処分の無効確認訴訟を提起するとともに、民事訴訟法の規定に基づき、本案判決確定まで特許発明の使用実施を妨害してはならないこと、および既になされた差押えを解除することを求める仮処分を申請した。
あてはめ
本件差押えは、行政庁の処分であることが極めて明瞭である。上告人は差押えが無効であることを理由に仮処分を求めているが、仮に無効であったとしても、公権力による処分として形式的に存在している以上、裁判により取り消されるか無効とされるまではその効力を失わない。したがって、判決確定前に処分の効力を停止させるには、特別法が規定する執行停止の手続によらなければならず、一般的・補充的な仮処分によることは同条項の趣旨に反し許されない。
結論
行政庁の処分に対する仮処分の申請は不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
行政事件訴訟法44条の「仮処分の排除」を確立した重要判例である。答案上では、処分性のある行為に対して仮処分(民保法)を申し立てた場合の適法性を問う場面で使用する。無効な処分であっても執行停止手続が排他的に適用される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(オ)196 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮の地位を定める仮処分において、疎明が不十分な場合に疎明に代えて保証を立てさせて仮処分を命ずることは許容されるが、裁判所が常にその義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、仮の地位を定める仮処分の申立てを行ったが、原審において疎明不十分を理由に退けられたものと解される。これに対し上告人…