判旨
仮処分の申請において、被保全権利と保全の必要性のいずれか一方について疎明を欠く場合には、裁判所は当該申請を排斥することができる。
問題の所在(論点)
仮処分の要件である「被保全権利」と「保全の必要性」のうち、一方が疎明されない場合に、他方の要件を審理・判断することなく申請を棄却できるか。また、疎明不足の場合に保証による代用を命じないことは違法か。
規範
仮処分の申請が許容されるためには、被保全権利(実体上の権利)および保全の必要性の両者が疎明されなければならない。これらのいずれか一方の疎明を欠く場合には、裁判所は仮処分申請を却下することができる。また、疎明が不足する場合に、保証を立てさせて仮処分を命ずるか否かは、裁判所の裁量に属する。
重要事実
上告人(債権者)が、被上告人(債務者)を相手として仮処分の申請を行った。原審は、被保全権利の前提となる事実(被上告人が無限責任社員でないこと)について疎明がないと判断し、かつ被上告人がむしろ無限責任社員であることが疎明されたとして、仮処分申請を却下した。これに対し、上告人は「保全の必要性」について判断しなかった点や、保証を立てさせて命じなかった点に違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審は被保全権利の存否を先決問題として検討し、被保全権利の前提事実が疎明されないと判断している。仮処分は被保全権利と保全の必要性の両者が揃って初めて許容されるものであるから、被保全権利の疎明がない以上、保全の必要性について触れるまでもなく申請を排斥できる。また、保証をもって疎明に代え、仮処分を許容するか否かは裁判所の自由裁量であるから、保証を立てさせて仮処分を命じなかったとしても違法とはいえない。
結論
仮処分申請において、被保全権利の疎明を欠くことを理由に、保全の必要性について判断せず申請を排斥した原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
民事保全法13条(疎明)および同法14条(保証)の解釈指針となる。答案上は、保全要件のいずれか一方が欠ければ足りるという判断の合理性を示す際や、保証の提供による発令が裁判所の裁量であることを論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)196 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮の地位を定める仮処分において、疎明が不十分な場合に疎明に代えて保証を立てさせて仮処分を命ずることは許容されるが、裁判所が常にその義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、仮の地位を定める仮処分の申立てを行ったが、原審において疎明不十分を理由に退けられたものと解される。これに対し上告人…