仮処分の申請において、被保全権利の疏明がなく、裁判所が保証をもつて疏明に代えることを不適当と考えるときは、仮処分の理由の存否を判断しないで仮処分の申請を却下することができる。
被保全権利の疏明がない場合と仮処分理由についての判断の要否
民訴法740条2項,民訴法741条2項(756条)
判旨
仮処分申請において被保全権利等の疎明がない場合、裁判所が保証金をもって疎明に代えるか否かはその自由裁量に属し、疎明がないことを理由に申請を却下することは適法である。
問題の所在(論点)
仮処分申請において、被保全権利または保全の理由について疎明がない場合に、裁判所は必ず保証を立てさせて仮処分を命じなければならないか。換言すれば、疎明の欠如を理由に直ちに申請を却下することが許されるか、その裁量の有無が問題となる。
規範
仮処分の要件である被保全権利及び保全の理由については、原則として疎明を要する。裁判所は、疎明がない場合であっても保証を立てさせることで仮処分を許すことができる(民事保全法13条2項、14条1項参照)が、これは裁判所の自由裁量に属する。したがって、疎明がなく、かつ保証をもって疎明に代えることを不適当と判断したときは、申請を却下することができる。
重要事実
上告人(申請人)は、仮処分の申請を行ったが、原審において仮処分の要件である被保全権利について疎明がないと判断された。原審は、保証の提供によって疎明を補完させる等の措置を講じることなく、被保全権利の疎明がないことを理由に直ちに本件申請を却下した。これに対し上告人は、疎明に代わる保証の機会を与えずに却下したことの違法を主張して上告した。
あてはめ
仮処分制度において保証による疎明の代用を認める規定は、裁判所にその余地を認めたものにすぎない。本件において、原審は被保全権利に対する疎明がないと認定しており、これに対し保証をもって疎明に代えることを不適当と判断した結果、申請を却下したものである。このような判断は裁判所の合理的な裁量の範囲内にあるといえる。
結論
被保全権利等の疎明がない場合、保証をもって代えるか否かは裁判所の自由裁量であるため、疎明がないことを理由に申請を却下した判断は正当である。
実務上の射程
保全処分の疎明要件に関する基本的判例である。答案上は、保全命令の要件(民事保全法13条)を論じる際、疎明が不十分な場合に裁判所が保証によって補完するか否かは裁量事項であり、疎明がないことを理由とする却下も適法であることを示す際に引用する。
事件番号: 昭和26(オ)625 / 裁判年月日: 昭和29年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮処分の申請において、被保全権利と保全の必要性のいずれか一方について疎明を欠く場合には、裁判所は当該申請を排斥することができる。 第1 事案の概要:上告人(債権者)が、被上告人(債務者)を相手として仮処分の申請を行った。原審は、被保全権利の前提となる事実(被上告人が無限責任社員でないこと)について…