判旨
仮の地位を定める仮処分において、疎明が不十分な場合に疎明に代えて保証を立てさせて仮処分を命ずることは許容されるが、裁判所が常にその義務を負うものではない。
問題の所在(論点)
仮の地位を定める仮処分の申立てにおいて、疎明が不十分な場合、裁判所は常に疎明に代えて保証を立てさせて(担保を条件として)仮処分を許さなければならないか。
規範
民事保全法上(旧民事訴訟法下の法理)、保全命令の申立てに係る被保全権利及び保全の必要性の疎明が不十分である場合、裁判所は、疎明に代えて保証を立てさせて仮処分を許すことができる(裁量的担保)。しかし、これは裁判所に付与された裁量的権限にすぎず、疎明不十分の場合に必ず保証を立てさせて仮処分を命じなければならないという義務を課すものではない。
重要事実
上告人は、仮の地位を定める仮処分の申立てを行ったが、原審において疎明不十分を理由に退けられたものと解される。これに対し上告人は、疎明が不十分であっても保証を立てさせて仮処分を認めるべきであった旨を主張し、先例(疎明に代わる担保を認めた事例)に違反するとして上告した。
あてはめ
上告人が引用する判例は、疎明不十分の場合に保証を立てさせて仮処分を認めることが「違法ではない」ことを示したにすぎない。すなわち、担保による疎明の補完は裁判所の裁量に委ねられた事後的な救済手段であり、申立人が当然に要求できる権利ではない。したがって、裁判所が担保を立てさせて仮処分を命じなかったとしても、直ちに違法とはならない。
結論
疎明不十分の場合、裁判所は保証を立てさせて仮処分を許すことができるが、常にそうすべき義務があるわけではないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
民事保全法13条2項(及び15条)の解釈に関する射程を持つ。答案上は、保全命令の発令要件における「疎明」と「担保」の関係を論じる際、裁判所の広範な裁量を裏付ける根拠として活用できる。特に疎明を欠く申立てを裁判所が却下した際の妥当性を検討する場面で有用である。
事件番号: 昭和24(オ)169 / 裁判年月日: 昭和25年7月11日 / 結論: 棄却
一 仮処分事件において、債権者主張の事実につき疏明がない場合に、債権者に保証を立てさせて仮処分を命ずるか否かは、裁判所が自由裁量により決しうるところで、常に仮処分を命じなければならないものではない。 二 信託法第三条は、信託の趣旨をもつて財産権を譲渡した場合においても信託の登録又は登記をしなければ、その譲渡の信託なるこ…