判旨
当事者が申請した人証を採用するか否かは、それが唯一の証拠でない限り、裁判所の裁量に属する。
問題の所在(論点)
当事者が申請した証人(人証)を裁判所が採用しなかったことが、民事訴訟法上の証拠調べの義務に違反し、違法となるか。
規範
当事者が申請した人証(証人等)を採用するか否かは、当該証拠がその事実を証明するための「唯一の証拠」でない限り、裁判所の自由な裁量に委ねられる(自由心証主義の範疇)。
重要事実
上告人(当事者)が原審(控訴審)において証人尋問を申請したが、原裁判所はこれを採用せず、判決を下した。上告人は、証人を採用しなかったことが違法であるとして上告した。
あてはめ
本件において、申請された人証がその事実を立証するための「唯一の証拠」であったという事情は認められない。そうであれば、裁判所が当該証人を採用するか否かは裁量の範囲内であり、不採用とした原審の判断に違法はない。また、錯誤に関する判断等の他の争点についても、原審の判断を是認し、特段の違法は認められない。
結論
本件上告を棄却する。裁判所が当事者申請の人証を不採用としたことは、裁量権の範囲内であり適法である。
実務上の射程
民事訴訟法における証拠採否の自由(裁量)を確認した判例である。答案上は、証拠調べの必要性(旧民訴法259条、現行民訴法181条1項)との関係で、証拠申請の不当却下を論じる際、原則として裁判所の裁量を認める根拠として活用できる。ただし「唯一の証拠」である場合には、その採否に制限がかかる(証拠調べ義務が生じる)点に注意を要する。
事件番号: 昭和35(オ)1264 / 裁判年月日: 昭和36年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による証拠の取捨判断および事実の認定は原則として原審の裁量に委ねられており、特段の事情がない限り、独自の解釈に基づく憲法違反や法令違反の主張は上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が行った証拠の取捨判断や事実確定、ならびに判決書における住所・氏名の表示、判決言渡しの手…