判旨
弁護士が会社を代理して行った和解契約につき、当該弁護士に代理権があったか否かは事実認定の問題であり、証拠に基づき代理権が認められる場合には、その効力は会社に帰属する。
問題の所在(論点)
弁護士が会社を代理して締結した和解契約の効力に関し、代理権の有無の認定が適切になされているか。
規範
訴訟代理人(弁護士)が本人に代わって和解等の法律行為を行うためには、当該行為に関する代理権を有していることが必要である。代理権の有無は、証拠に基づき裁判所が事実認定を通じて判断する事項である。
重要事実
上告会社を代理して和解契約を締結した弁護士Dについて、上告会社は和解契約をなす代理権がなかったと主張し、被上告人はこれを否認した。原審は、証拠に基づき弁護士Dに本件和解についての代理権があったと認定した。
あてはめ
本件では、上告会社が代理権の不在を主張しているが、原判決は証拠に基づき弁護士Dに代理権があった事実を認定している。証拠に基づく事実認定に不合理な点はなく、適法に代理権が肯定される以上、和解の効力を争う上告人の主張には理由がない。
結論
本件和解について弁護士Dに代理権があったとする原審の判断は正当であり、本件上告を棄却する。
実務上の射程
弁護士が訴訟外または訴訟内で和解を行う際、相手方はその授権の有無を慎重に確認すべきである。実務上は、訴訟委任状の記載範囲や特別の授権の有無(民事訴訟法55条2項各号)が重要となる。答案上は、無権代理や表見代理の成否を論ずる際、事実認定の基礎となる証拠の重要性を示す材料として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)813 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
一 甲乙間に成立した和解契約の履行確保のため、甲が乙の委託により乙の代理人として選任した弁護士丙の裁判上の和解の申立に基き、甲乙間に右和解契約どおりの内容の和解調書が作成されたところ、その後乙が丙に対する代理権授与の真実を争い甲に対し右和解の無効確認の訴訟を提起した場合において、丙が甲の代理人としてこれに応訴し訴訟を迫…
事件番号: 昭和32(オ)341 / 裁判年月日: 昭和35年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が訴訟代理人の選定および訴訟代理権授与行為をなす代理権を第三者に与えることは原則として自由であり、その受任者は特段の事情のない限り弁護士であることを要しない。また、訴訟行為の代理行為(訴訟委任行為)そのものがすべて弁護士でなければなし得ないものと解すべき規定は存在しない。 第1 事案の概要:…
事件番号: 昭和35(オ)480 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
貸金請求事件における被告の訴訟代理人の和解の権限には、和解の一条項として、当該貸金債権の担保のため被告所有の不動産について原告に対し抵当権設定契約をなす権限も包含されるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)875 / 裁判年月日: 昭和33年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】即決和解の条項が一方当事者に著しく有利であっても、賃貸借解除後の経緯や返り証の不存在等の諸事情を勘案し、通謀虚偽表示等の瑕疵が認められない限り、当該和解は有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人との間で即決和解が成立したが、その条項は被上告人にとって著しく有利な内容であった。この和解は…
事件番号: 昭和34(オ)24 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士法25条1号等に抵触し訴訟法上無効とされる裁判上の和解であっても、後に当事者間で別途私法上の合意が成立すれば、その合意に基づき和解内容と同様の私法上の権利義務関係を発生させることができる。 第1 事案の概要:上告人A2と被上告人Bとの間でなされた裁判上の和解について、担当弁護士Dが弁護士法2…